本研究は、主にD・H・ロレンスの文学における環太平洋旅行表象の分析を行った。その際、エドワード・サイードやドゥルーズ=ガタリ等に代表されるポストコロニアル批評ないし旅に関する理論を活用しただけでなく、ジャック・ラカンとスラヴォイ・ジジェクによる構造主義的ないしポスト構造主義的精神分析批評を援用した。 また、ロレンスと同時代のモダニストであるジェイムズ・ジョイスとの比較研究も行った。実際の分析は比較の前提となる両者の共通性に焦点を当てて行ったが、両作家の旅の方向性や捉え方の違いを把握し、ロレンス等の環太平洋旅行表象の特徴を際立たせる可能性も見出せた。
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