研究課題/領域番号 |
23520314
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90321497)
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研究分担者 |
奥 聡一郎 関東学院大学, 工学部, 教授 (30288089)
玉井 史絵 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (20329957)
深谷 素子 慶應義塾大学, 法学部, 講師 (40468616)
寺西 雅子 (那須 雅子) くらしき作陽大学, 食文化学部, 講師 (50311098)
西原 貴之 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (50469590)
小澤 緑 (市川 緑) 香川高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90413848)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 英米文学 / 英語教育 / 文学教育 |
研究概要 |
本研究グループでは、英語教育における文学作品の役割を再検討し、文学研究と英語教育の有機的結合とその教育的効果を目に見える形で立証することを目指し研究を進めている。以下平成23年度の研究の中心となった(1)「文学教材を用いた授業の分析」と(2)「英語上級者に対するインタビュー」(英語版オーラルヒストリーの編纂)を中心に報告する。 まず(1)としては、平成23年9月9日に市川緑氏が香川高等専門学校で実践された多読授業(電気科4年生45名対象)を寺西雅之と那須雅子氏が観察し、その授業の教育的効果に関して実践者を交えて分析した。平成23年12月5日には、深谷素子氏が慶應義塾大学法学部の学生を対象に実践した多読授業およびレイモンド・カーヴァーの短編作品を用いた授業を、寺西雅之、那須雅子氏、および市川緑氏が参観した。(2)に関してはまず、平成23年9月9日に香川高等専門学校において、工学系の専門科目が中心のカリキュラムの中で、英語運用能力試験において高得点を取得するなど高度な英語力を習得したと思われる学生に対してインタビューを行った。10月4日には、兵庫県立大学附属高校にて開催された「4―Party Friendship Debate Match」に参加した韓国、タイの高校生に対してその英語学習法に関して取材を行った。12月5日、6日には慶應義塾大学法学部において、英語運用能力試験の結果と担当教員の推薦により高度な英語力を習得したと考えられる学生に対してインタビューを行った。さらに12月13日には同志社大学グローバルコミュニケーション学部において、担当教員の推薦する学生に対してインタビューを行った。これ以外にも本研究メンバーの推薦する社会人や教員に対してインタビューを実施している。そのデータに関しては、特に外国語学習と読書という観点から現在分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず計画通りに進展していると思われる点として、(1)授業参観の実施、(2)インタビューの実施、(3)学会活動、そして(4)国際ジャーナルでの論文の出版が挙げられる。(1)、(2)に関しては、「研究業績の概要」でも触れた通りであるが、当初の計画以上に多くの優れた授業実践を観察・分析することができ、また英語上級者に対するインタビューも高度な英語学習者に対して実施でき、英語学習における読書、特に文学作品の役割が明確になってきている。(3)に関しては、日本英文学会第83回全国大会において寺西雅之および深谷素子氏が、そして第64回日本英文学会中国四国支部において西原貴之氏および那須雅子氏が発表するなど本研究分野の重要性を訴え、研究の今後の方向性に関して考える機会を数多く持つことができたと思われる。さらに(4)に関しては、国際文体論学会の専門誌である『Language and Literature』に日本における英語文学教育の状況をまとめた「The role of stylistics in Japan: A pedagpogical perspective」が掲載されることになったのは今年度の大きな成果と考えられる。これら以外にも、日本国際教養学会(JAILA)の設立と特別公開シンポジウムの開催、「文学教育ハンドブック」作成のプロジェクト(JACET文学教育研究会)、英文学・英語教育関係の学会・シンポジウムにおける司会・コーディネーターなど研究活動は計画通りに進行したと思われる。一方、日程調整の関係で海外における授業参観が実現できなかったのが今年度の反省点である。以上の理由によりこれまでの達成度を「おおむね順調」と評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、引き続き(1)授業参観、(2)英語上級者に対するインタビューを実施し、英語教育における文学教材の重要性を明確にしていくとともに、(3)学会活動と(4)出版活動を通じて、本研究の重要性を関連の学会や社会に対して訴えていきたいと考えている。また、他分野の研究者とも交流を行い、英語学習における文学作品の役割について、さらに研究を深めていきたい。 まず(1)に関しては、国内だけでなく欧米やアジア諸国の実践例を分析したいと考えている。また(2)に関しては、引き続き英語上級者のインタビューを実施していくが、外国語としての日本語の学習者や非英語圏における英語上級者などより幅広い学習者を対象にインタビューを実施していく予定である。(3)に関しては、日本英文学会、JACETなどの国内の学会に加えて、国際文体論学会などの国際学会においても積極的に研究成果を発表していく予定である。また、昨年自身も設立に携わった日本国際教養学会において引き続きシンポジウムや研究会を主催するなどして、本研究分野の重要性に関して議論を重ねていきたい。(4)に関しては、「文学教育ハンドブック」の作成、日本国際教養学会の雑誌『JAILA Journal』の発刊、日本人英語学習者向け教材の作成、そして海外研究者・読者向けの英語の著書の出版に向けて準備を進めているところである。これらの研究成果発表を通じて、様々な分野の研究者と議論を重ね、本研究をさらに推進していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず「次年度使用額」が生じた理由であるが、当該年度に予定していた海外における授業参観が日程調整の都合で延期になったのが大きな理由である。さらに、備品等で当初の予定よりも安く入手できたものがあったのももう一つの理由である。 次年度の研究費の使用計画であるが、引き続き国内での英語上級者インタビューや授業参観を継続するため、その費用を本研究費から使用する。さらに、海外の学校の授業参観や、7月にマルタ共和国にて開催される国際文体論学会などの国際学会に出席し、研究発表を行うための費用も必要である。なお、国際文体論学会には、寺西雅之、奥聡一郎、那須雅子の3名が発表予定である。備品としては、多読教材や本研究分野に関連する専門書の購入のための費用に使用する予定である。また、本研究の成果を発表するための場として、昨年設立した日本国際教養学会(JAILA)の全国大会を考えており、その企画、運営のための費用や、講演等で発生する謝礼金なども、本研究費より使用したいと考えている。
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