研究課題/領域番号 |
23520314
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90321497)
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研究分担者 |
奥 聡一郎 関東学院大学, 工学部, 教授 (30288089)
玉井 史絵 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (20329957)
深谷 素子 慶應義塾大学, 法学部, 非常勤講師 (40468616)
寺西 雅子(那須雅子) 岡山大学, 言語教育センター, 准教授 (50311098)
西原 貴之 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (50469590)
小澤 緑(市川緑) 香川高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90413848)
藤原 知予 香川高等専門学校, その他部局等, 助教 (40609674)
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キーワード | 国際情報交換 / イギリス:オランダ:フィンランド:中国 / 文学教育 / 英語教育 / 教育的文体論 / 多読 / オーラルヒストリー |
研究概要 |
本年度の研究の中心となった(1)授業参観、(2)英語上級者に対するインタビュー、(3)学会活動、そして(4)出版活動について報告する。まず研究活動であるが、(1)としては、奥聡一郎氏がイギリスの小学校(St. Ebbe's CE(Aided) School等2校) にてEnglishの授業を見学し、文学教材の扱い方を中心に研究を行った。また深谷素子氏はフィンランド、トゥルク市内のオスタリヴォリ中学、高校にて英語授業(4教員、9授業)を視察し、ラーナーオートノミーとしての多読の活用について分析・考察を行った。(2)としては、那須雅子氏が慶應義塾大学、成蹊大学および東京大学の英語上級者へのインタビューを行い、その内容を整理・分析した。次に研究成果発表であるが、まず(3)としては、国内では寺西雅之によるJACET文学教育研究会4月例会での講演「文学批評からテクスト批評へ: 文学性を味わう・教える」や、那須雅子氏による日本英文学会第84回全国大会における発表「英語学習版「オーラルヒストリー」の編纂に向けて外国語習得における「読書」の役割について」など数件が、また国際学会としては寺西雅之、奥聡一郎氏、那須雅子氏がマルタ共和国で開催された国際文体論学会にて行った研究発表が挙げられる。また(4)に関しては、Language and Literature 2012年5月号に掲載された論文 ‘The role of stylistics in Japan: A pedagogical perspective’(寺西雅之、齋藤安以子、坂本輝世、那須雅子による共著)など、本研究メンバーによる文学および英語教育に関する論考が多数掲載されている。なお本研究グループの研究活動はホームページ( http://www.kaken-litedu.sakura.ne.jp/ )に随時掲載している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず計画通りもしくはそれ以上に進展していると思われる点として、(1)海外での授業参観の実施、(2)英語上級者に対するインタビューの実施と分析、そして(3)研究成果の発表が挙げられる。(1)に関しては「研究実績の概要」でも触れたとおりであるが、特にイギリスにおいてナショナルカリキュラムやリテラシーアワーの実践例を視察できたのは大きな成果だと考えている。またフィンランドでの英語教育の現状を視察し、さらに現場の教師に対するインタビューが実施できたのは本研究にとって大きな進展と思われる。一方(2)であるが、日本での英語教育を通じて高度な英語力を習得している日本人大学生にインタビューができたのは大きな成果だと考えられる。また次の(3)とも関連するが、この研究成果を日本英文学会全国大会にて発表し、多くの研究者より有益なアドバイスをいただいたことは、今後研究を進めていくうえで極めて意義深いことである。(3)に関しても「研究実績の概要」ですでに触れているが、中でも日本の英語教育における文学教材の役割を論じた論文 ‘The role of stylistics in Japan: A pedagogical perspective’が国際文体論学会の専門誌であるLanguage and Literature 2012年5月号に掲載されたことは大きな成果だと考えられる。さらに平成24年度は国際文体論学会、日本英文学会、JALTなどにおいて本研究メンバーが積極的に本研究成果を発表している点も本研究が順調に進展していると判断できる理由である。一方反省点としては、日本やアジア諸国における文学と英語教育に関する実態を十分に調査できなかった点が挙げられる。以上の理由よりこれまでの達成度を「おおむね順調に進展している」と評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究活動としては、引き続き(1)授業見学と(2)英語上級者に対するインタビューを実施するとともに、これまで得られた資料やデータの分析をさらに進めたいと考えている。また、(3)研究成果の発表もより積極的に行う予定である。 まず(1)であるが、今年度は国内の学校における授業分析を行い、さらにこれまで作成している授業案などを実践し、その反応なども分析する予定である。(2)に関しては、これまで実施した学習者に対する追跡調査を行い、学習環境の変化と語学力の関係などに関してまとめる。また、東京外国語大学など新たな協力校においてもインタビューを実施し、さらに資料を蓄積していきたいと考えている。 (3)に関しては、まず8月にハイデルベルグ大学にて行われる国際文体論学会において寺西雅之、奥聡一郎氏、那須雅子氏が発表を予定している。今回は文学作品を用いた英語教育の実践例となる教育的文体論の活用法などについて国内外の研究者と議論を深めたいと考えている。その他にも日本英文学会やJACET、JALT、JAILAなどでの研究発表やシンポジウムを予定している。一方出版活動としては、まずJACET関西支部文学教育研究会から予定している『英語文学教育ハンドブック』(仮題)が挙げられる。これは国内の研究者が実践した授業を授業案として中・高・大の教員・研究者に紹介する目的で編纂しているものである。一方Palgraveより予定している英語論文集Teaching Literature and Language Education in the EFL Classroom(仮題)は、日本、イギリス、オランダの研究者が共同で執筆している論文集であり、文学教材を用いた英語教育の重要性と実用性についてグローバルな視点で共有することを目的としている。これらの出版プロジェクトは平成25年度中の完成を目指している。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず「次年度使用額」が生じた状況であるが、奥聡一郎氏が在外研究としてオックスフォード大学に派遣されたことなどにより、当初予定していたよりも旅費(海外)が少なかったことが主な原因である。さらに、消耗品などが当初予定していたよりも安価に入手できたことももう一つの理由と考えられる。 次年度の研究費の使用計画であるが、主に(1)出版費用として使用する予定であるが、その他にも(2)国内旅費、(3)書籍購入費、(4)物品購入費、そして(5)JAILA全国大会運営費などに用いる予定である。(1)は具体的には、JACET関西支部文学教育研究会から予定している『英語文学教育ハンドブック』(仮題)とPalgraveより予定している英語論文集Teaching Literature and Language Education in the EFL Classroom(仮題)の執筆料に分けられる。(2)は、国内の授業参観やインタビュー実施、さらに学会出席のためのものである。(3)は、関連分野の書籍購入のためのものであり、(4)は記録メディアなどの消耗品である。(5)のJAILA全国大会であるが、平成26年3月16日に慶應義塾大学にて開催予定であり、その場で本研究に関連する発表・シンポジウムなどを行う予定である。その会場使用料、講師料、謝金などを本科研費より使用したいと考えている。
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