研究課題/領域番号 |
23520318
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
佐久間 みかよ 和洋女子大学, 言語・文学系, 准教授 (00327181)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / メルヴィル / 19世紀 / 島 |
研究概要 |
平成23年度は、計画にしたがって「島」の表象についてメルヴィルを中心に調査研究を行った。研究の第一段階として、境界意識の歴史的背景を研究した。まず、領土拡大を行った1846年から48年におこったメキシコ戦争について考察し、戦争に対するアメリカ国民の声に注目した。これを平成23年5月の「メルヴィルと戦争」の発表に生かし、さらに、戦争をキーワードとして、『白鯨』、『マーディ』、『戦争詩集』、『ビリー・バッド』を再読し、南北戦争を経験したメルヴルの意識の変化を研究した。 平成23年6月にローマで開かれたメルヴィル国際学会に参加・発表し、ローマというテーマのもとで本研究を再考できる機会を得た。とりわけ『クラレル』をへて『ビリー・バッド』におけるメルヴィルの思想の成熟の経緯を音楽というテーマで考えることができた。また8月には、タヒチを中心とした南海の現地調査を行うことができた。この時えられた知見をニューヨークの歴史協会にある資料で確認し、環境美学的な視点が得られた。 これらのことから、島の持つ意味の地理的、戦略的、比喩的意味を時系列的に捉え直すことができ、平成24年10月にシアトルで開かれるPAMLA学会のスペシャルセッションのトピックとして応募するべくまとめることができた。これが『島とアメリカ文化』のセッションとして採択され、発表者を広く日米で依頼した。その結果、メルヴィル学者をはじめ、日米のすぐれた研究者の参加を得られることができた。このセッションでは、パネリストの発表を通して、島の持つ意味を地理的な意味から広げて、アメリカ大陸と太平洋地域の接点の持つ意味、さらにはヨーロッパ大陸との関わりなどを、脱植民地的コンテクストにとどまらない新たな視点の提供ができるよう準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メルヴィル研究では、南海を中心とした作品の読解を行い、これを他の作家の南海探検記と比べてみることができた。その結果、島のもつ比喩的な意味の重要性が確認できた。そして、南海諸島への現地調査から、メルヴィル以外の作家の視点への知見が開け、島をテーマにした研究発表会の計画をたてることできた。平成23年度中には行えなかったが、平成24年にむけて、海外でのセッションの計画をたてることができた。これを平成24年にアメリカで開かれる学会で行い、広く意見交換が行えないか検討し、PAMLA学会に応募した。このプロポーザルが認められたことにより、島の意味を多角的に考える機会が得られることになった。このセッションにおいて日米の研究者から島の持つ意義の比喩的考察の意見交換ができるよう発表の依頼などを行い、刺激的なプロポーザルが集まった。これらをもとに、島の意味についてアメリカと日本という視点で相互交渉的な考察ができるものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年10月にPAMLA学会でおこなわれる「島」をテーマにしたセッションの準備を十分に行いたい。とりわけ、メルヴィルの南海体験と著作の関係についての研究の第一人者であるメアリー・K・ エドワーズ先生が発表依頼を許諾されたことにより、メルヴィルの南海意識、アメリカ作家の捉える島の表象について意見交換を行いたいと思っている。また、これにさきだち平成24年6月には、フィレンツエで開かれるエマソン・ホーソーン・ポー合同国際学会でも発表の機会が得られたので、エマソン、ソローなどの抱く、メルヴィルとは異なる、比喩的な「島」の意義について調査し発表し、海洋体験のあるメルヴィルと違った「島」の意識について考察を広めたい。その上で、ポストコロニアル批評、オリエンタリズム批評の再考に加え、環境美学的な批評を研究し、「島」のもつ意義を研究していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、10月にシアトルで行われるPAMLA学会のセッションへの旅費、およびこの際に研究発表を依頼した講師に対する専門的知識の提供として謝金に使用したいと考えている。これをふまえた更なる調査の旅費として研究費を使用したいと考えている。この際には、ボストンを中心にケープコッド、ナンタケットなどの19世紀の捕鯨の基地として知られた場所を調査し、捕鯨博物館、歴史博物館で当時の資料などを調査したいと考えている。海外調査がやむをえない事情で行えなかった場合は、国内で手配できる、当時の雑誌の復刻版書籍の購入(ハーパーズ・ウィークリー)にあてることにしたい。
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