19世紀アメリカ文学者がとりあげた島のなかで特徴的なものは、ナンタケット島に関するものである。大西洋に面したこの小さな島の歴史は、アメリカ植民と捕鯨業の歴史とともに推移した。その歴史から、この島を直接物語に使った作品、メルヴィルの『白鯨』とポーの『アーサー・ゴードン・ピムの物語』、この島を訪れたエマソンやソローの記録が生まれた。現在残虐という印象をともすればいだかせる捕鯨の基地に作家たちはある種のロマンティシズムを描いている。それはこの島の持つ孤立性に共感を抱いているからであり、島が喚起する孤立するイメージが肯定的なものとして受容され、アメリカ外交の孤立主義に影響を与える経緯を明らかにした。
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