本研究の課題はエリザベス朝イングランド社会の社会的弱者が同時代の演劇においてどのように表象されたのか、その表象の社会的背景を分析することである。本研究がエリザベス朝の社会的弱者を対象とする理由としては、今日の社会保障制度の起源が同時代のイングランドに生まれた救貧法にあり、その点本研究の対象こそが貧困対策が法的に国家義務となった社会における最初の社会的弱者であったからである。本研究は変化する社会の中で演劇が社会的弱者にどう向かい、貧困者たちに登場人物としてどのような社会的イメージを与えていたのか、そのイメージにはどのような不安、恐怖、本音が投影されていたのかを解明した。
|