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2012 年度 実施状況報告書

異性配役の身体を探る:オールメール・シェイクスピアからプロペラまで

研究課題

研究課題/領域番号 23520329
研究機関日本大学

研究代表者

阪本 久美子  日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (50319240)

キーワードシェイクスピア / 上演研究 / 異性配役
研究概要

本研究の目的は、日本およびイギリス連合王国のシェイクスピア上演における異性配役(女装および男装)の身体を比較検討することにある。そのために、二国の現代演劇における異性配役の事例を、受容も含めた現状および特性を把握しつつ調査してきた。文化におけるジェンダー形成の問題と舞台における身体表象のつながりも視角に入れる。平成24年度は、主に以下の研究活動および情報公開活動を行った。
(1)シェイクスピア上演における異性配役の代表的事例として、蜷川幸雄演出の全員男性俳優による『トロイラスとクレシダ』を、観劇を含めた視聴覚資料閲覧および上演資料から調査し、特にシェイクスピアのテクストにおけるクレシダの表象と関連して考察した論文を発表した。
(2)平成24年10月3日から9日まで、イギリス連合王国に調査研究のために出張した。ロンドンのグローブ座において、『十二夜』および『リチャード三世』を調査した。この上演は、グローブ座が開設当初行なった男性俳優のみの上演を含む「オリジナル・プラクティス」の試みのリバイバルであり、当該研究の重要事例であった。また、女性役を演じた男優や、オリジナル・プラクティス上演に参加した男優の講演およびインタビューを聞くことができた。同時に、文献収集およびその他の上演の観劇調査も行なった。
(3)平成25年2月22日から28日まで、イギリス連合王国に学会出席・発表および調査研究のために出張した。英国シェイクスピア協会がデモントフォード大学にて開催した学会にて、ジェラール・プレスギュルヴィック版ミュージカル『ロミオとジュリエット』の宝塚版改作上演に関して口頭発表した。また、ストラトフォード・オン・エイボンにて主要上演作品を調査し、バーミンガム大学シェイクスピア研究所にて、最近の上演資料を閲覧した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、平成23年度における異性配役上演の背景の調査を基にして、上演作品の調査および上演資料の調査を本格的に進めることを計画していた。そのために、日本およびイギリスの現代演劇における異性配役の事例を、両国において観劇、視聴覚資料閲覧(DVDとして映像パッケージ化されたもの、および劇場アーカイブにおける映像資料)により調査研究した。また、個々の事例およびシェイクスピア劇や批評理論に関する文献調査を行なった。特に、オールメールの『じゃじゃ馬ならし』(彩の国さいたま芸術劇場)と女優のみの『じゃじゃ馬ならし』(グローブ座)の二つの上演におけるセクシャル・ポリティクスの比較調査、ハムレットが女優に演じられた『ハムレット』の上演の研究を行なった。
また、以下のとおり研究活動の成果を発信、およびその準備を行なった。
(1)シェイクスピア上演における異性配役の代表的事例として、蜷川幸雄演出の全員男性俳優による『トロイラスとクレシダ』を、観劇を含めた視聴覚資料閲覧および上演資料より調査し、特にシェイクスピアのテクストにおけるクレシダの表象と関連して考察した論文を発表した。
(2)平成25年2月26日に、英国シェイクスピア協会がデモントフォード大学にて開催した学会にて、ジェラール・プレスギュルヴィック版ミュージカル『ロミオとジュリエット』の宝塚版改作上演に関して口頭発表した。
(3)平成25年秋に開催される日本シェイクスピア協会主催第52回シェイクスピア学会におけるセミナー「シェイクスピアの『異性配役』を再考する」のコーディネイターとして、その企画運営を進めている。このセミナーは、異性配役上演をできる限り多角的に考察することを目的としている。本年度後半から学会当日まで、メンバー全員で討論を重ねていく長丁場のプロジェクトである。
以上のことから、おおむね順調に研究が進んでいると考える。

今後の研究の推進方策

20世紀以降(場合によってはヴィクトリア朝以降)の異性配役の上演史を調査することにより、異性配役の上演史上の特色が明確になった。また、個々の事例に関しては、以下のとおり、研究の方向性が定まった。
(1)男性のみによる上演と女性のみによる上演におけるセクシャル・ポリティクスの変化・相違を研究:既に調査した事例は、オールメールの『じゃじゃ馬ならし』(彩の国さいたま芸術劇場)と女優のみの『じゃじゃ馬ならし』(グローブ座)であるが、さらに他の事例の検証を行なう。(2)主役である重要な男性登場人物を女性が演じた(ジェンダー・ベンディングの)上演における、作為的な「ジェンダー」の様相、男性性・女性性の表象の考察を進める:ハムレットが女優に演じられた『ハムレット』の上演を調査したが、『リア王』に関しても同様な調査を行なう。(3)女性のみによる上演の調査:日本における宝塚歌劇団によるシェイクスピア上演の調査研究を進める。
情報公開活動としては、以下を計画している。
(1)平成25年2月26日に、英国シェイクスピア協会がデモントフォード大学にて開催した学会にて口頭発表した、宝塚によるジェラール・プレスギュルヴィック版ミュージカル『ロミオとジュリエット』の上演についての論文(The Male Body and the Female Body in Takarazuka’s Romeo and Juliet)を仕上げること。(2)日本シェイクスピア協会主催第52回シェイクスピア学会ににおけるセミナー「シェイクスピアの『異性配役』を再考する」を成功させて、学会終了後は一冊の本として出版すること。(3)日英における20世紀以降の異性配役を含む上演記録を含む研究成果を、ネット上で公開する。

次年度の研究費の使用計画

イギリス連合王国における上演と日本の上演を比較するというプロジェクトの性質上、次年度も渡英が必須となる。また、演劇は見なければ研究できないものであるため、本年度同様、視察が研究の前提となる。したがって、費用の内訳は本年度とそれほど変化はないと考える。追加点は、日本シェイクスピア協会主催第52回シェイクスピア学会ににおけるセミナー「シェイクスピアの『異性配役』を再考する」にて発表された論文を編纂して、書籍として出版するための出版費用がかかる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] The Tragedy of Cressida, or In Search of Cressida's Cressida2013

    • 著者名/発表者名
      阪本久美子
    • 雑誌名

      人間科学研究

      巻: 第10号 ページ: 1-10

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Jonathan Munby's Romeo and Juliet and Olivier Py's Romeo et Juliette2013

    • 著者名/発表者名
      Kumiko Hilberdink-Sakamoto
    • 雑誌名

      Shakespeare Studies

      巻: 50 ページ: 50-52

    • 査読あり
  • [学会発表] The Male Body and the Female Body in Takarazuka’s Romeo and Juliet

    • 著者名/発表者名
      Kumiko Hilberdink-Sakamoto
    • 学会等名
      Shakespeare and Japan
    • 発表場所
      De Montfort University

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公開日: 2014-07-24  

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