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2011 年度 実施状況報告書

19世紀アイルランド小説のアイリッシュネスの発展と拡散に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520330
研究機関日本医科大学

研究代表者

中村 哲子  日本医科大学, 医学部, 准教授 (20237415)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワード英米文学 / アイルランド文学 / 19世紀 / 小説 / 旅行記 / ビッグ・ハウス / カトリック / アイルランド農民
研究概要

本研究の初年度にあたり、研究環境および基盤を固めるとともに、1820年代と1830年代におけるアイルランド小説およびアイルランド旅行記を対象とし、アイリッシュネス(アイルランド性)がどのように表現され、またそれがどのように受容されていったかについて明らかにした。 この時期には、ジョン・バニムとマイケル・バニム、ウィリアム・カールトン、ジェラルド・グリフィンなどのカトリック作家が執筆活動を展開しはじめ、カトリック教徒である農民の現実を内側から描く小説が登場した。こうした作品には、プロテスタント作家であるマライア・エッジワース、シドニー・オーウェイソンらが描いてきたアイルランド人とは異なった、厳しい現実に翻弄される悲劇的なアイルランド人の姿が印象的に描かれている。カトリック作家の登場で、英語文学において表現され、そして受容されるアイリッシュネスが重層的に拡大したように捉えられそうだが、本年度の研究をとおして、むしろ、この時期には、アイリッシュネスがアイルランド農民という階級や西アイルランド(コナハトやマンスター)という地域と密接に関連づけられて受容される傾向にあった点が明らかとなってきた。 このことは、当時のアイルランド旅行記に目を向けることで明確になってきたものである。英国人やアングロ・アイリッシュ(アイルランドにおけるプロテスタント支配者層)だけでなく、ヨーロッパからの旅行者の手になる旅行記には、執筆者が何をアイルランド的であると捉え、そして何を読者にアピールしようとしているか如実に示されている。旅行記研究の意義については、ベルギーでの国際学会における研究発表によって明確に意識するにいたり、本研究の鍵を握るものと捉えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定では、1820年代から1840年代半ばまでの小説に焦点を合わせ、アイリッシュネスの表現と受容について読み解く作業をする予定であった。しかし、1820年代後半から1830年代のアイルランド旅行記に目を向けることで、当時のアイルランドへの視線がより包括的に捉えられることが明確となった。そのため、研究範囲の時代区分の一部(40年代についての研究)を次年度(平成24年度)に送り、小説研究と並行させて旅行記研究を進めた。この変更は、研究が遅れているというよりも、研究の方向性が若干変化してきていることによるものと認識している。

今後の研究の推進方策

本研究において、小説研究とともに旅行記研究が重要である点が認識されたため、両者を関連づけながら研究に取り組む予定である。したがって、平成24年度には、当初予定していた19世紀半ば過ぎの作品研究・歴史研究には進まず、19世紀前半の状況について全体像を明確に捉えることを目的とし、個別研究を展開する。その際、平成25年度と26年度に予定していた19世紀前半に関わる作品研究などを組み込み、平成25年度以降に、19世紀後半の研究に集中する方向とする。 これによって、平成24年度参加予定のアイルランド短編小説学会(ベルギーにて開催)での研究発表(19世紀前半の小説と旅行記の関連性についての発表)が、研究遂行上より有意義なものになると考えている。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度の研究費の使用目的は次のとおりである。1.海外学会参加のための旅費:平成23年度末から年度をまたがって開かれた国際旅行記学会、国際アイルランド文学研究協会大会、ならびにアイルランド短編小説学会参加のため2.研究関連文献資料入手:図書、オンライン上の資料、他大学や海外図書館から取り寄せる複写物3.議会図書館(ワシントンDC)での資料収集目的で必要なモバイルPC一式。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] アングロ・アイリッシュの揺らぎと可能性2012

    • 著者名/発表者名
      中村哲子
    • 雑誌名

      エール

      巻: 31 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [雑誌論文] トラウマと物語――トレヴァーの『ルーシー・ゴールトの物語』(2002年)をめぐって2012

    • 著者名/発表者名
      中村哲子
    • 雑誌名

      日本医科大学医学会雑誌

      巻: 8 ページ: 22-25

    • 査読あり
  • [雑誌論文] ‘Irish’ Quest in Catholic-Oriented Novels of the 1820s and 1830s: The Banim Brothers and William Carleton2011

    • 著者名/発表者名
      Tetsuko Nakamura
    • 雑誌名

      Journal of Iish Studies

      巻: 26 ページ: 38-51

    • 査読あり
  • [雑誌論文] British Identities in Scottish and Irish Contexts in Early Nineteenth-Century Fiction2011

    • 著者名/発表者名
      Yuko Matsui, Tetsuko Nakamura, and Haruko Takakuwa
    • 雑誌名

      Journal of Iish Studies

      巻: 26 ページ: 3-6

    • 査読あり
  • [学会発表] Conflicting Images of Irishness: Travel Accounts of Connemara and Joyce Country in the 1830s2011

    • 著者名/発表者名
      Tetsuko Nakamura
    • 学会等名
      International Association for the Study of Irish Literatures
    • 発表場所
      Catholic University of Leuven (Belgium)
    • 年月日
      2011年7月21日

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公開日: 2013-07-10  

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