研究課題/領域番号 |
23520333
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 英米文学 / シェイクスピア・フォリオ / マージナリア / 読者論 |
研究概要 |
本研究は、17世紀に4版まで出版されたシェイクスピア・フォリオの現存するコピーに残された読者の書き込みの蒐集、転写、分析をすることで得られるデータと、上演や出版、ジャーナリズムなどの資料とをつきあわせることで、主として18世紀の読者によるシェイクスピア受容の実態について、より具体的な解析を試みる読者論である。初年度である平成23年度では、計画に沿って、夏に、オックスフォード大学ボドレー図書館での調査(計画1)を、春にフォルジャー図書館での調査(計画2)を実施した。今回はじめて両図書館とも、閲覧室で、一定の条件のもとではあるが、閲覧者自身による写真撮影が許可された。これにより、膨大な量の画像資料を得ることができた。この結果、マイクロフィルムのスキャニングという当初計画していた作業(計画3)が不要となり、直接研究者がPC画面上で記録のための調査を可能とした。今年度の成果発表の目標を平成24年5月の日本英文学会での研究発表におき、計画7にそって、ボドレー図書館所蔵のGc.9 の書き込みに現れるShadwellという名の持つ意味を追求する論を「ステージからページへ?――あるシェイクスピア・フォリオ本の書き込み」にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
取得できた画像の量が、2回の現地調査で想定していた以上の規模に及んだので、その解析をすべて終了させることはできなかった。とはいえ、Gc.9については、実地調査とともに自ら撮影した画像がひとつの発見をもたらし、予想以上の成果を達成できる見通しがついたので、(2)の評価としたい。
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今後の研究の推進方策 |
フォリオを有する代表的図書館の撮影を許可するという従来からの方針転換を活用し、今後も実際に閲覧におもむき、書き込みのページ画像を作成、持ち帰ってデータにおこすという基本作業を継続して行っていくこととする。ファースト・フォリオと違い、現存数は多いはずにもかかわらず、その所在を全世界的に明らかにした資料や研究はないのが、本研究が抱える最大の課題である。今後も、ファースト・フォリオの所蔵館を中心に第2から第4の所蔵コピーに書き込みがないかの問い合わせをしながら、実地調査により情報を増やしていきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度と同じ方法で研究をすすめる。フォルジャー図書館の資料調査を継続して次年度も行うほか、書き込みのあるフォリオを問い合わせや検索で一件ずつ特定し、予算の許すかぎり、当該館を訪問し調査(できれば撮影しながら)閲覧したい。閲覧者の写真撮影を許可しない館については、画像請求で調査資料を得ることとする。読者像や読書に関する文化研究、書き込みを対象とする研究やフォリオ本および18世紀文化全般についての研究書の収集も継続的に実行していく。
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