研究課題/領域番号 |
23520333
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
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キーワード | 英米文学 / シェイクスピア・フォリオ / マージナリア / 読者論 / 国際研究者交流 / フランス |
研究概要 |
本研究は、17世紀に4版まで出版されたシェイクスピア・フォリオの現存するコピーに残された読者の書き込みの蒐集、転写、分析をすることで得られるデータと、上演や出版、ジャーナリズムなどの資料をつきあわせることで、主として18世紀の読者によるシェイクスピア受容の実態について、より具体的な解析を試みる読者論である。2年目となった平成24年度では、 1.5月に開催された日本英文学会全国大会においてボドレー図書館所蔵のGc.9の書き込みについて口頭発表し、9月に刊行された同学会Proceedingsに発表報告が掲載された。本発表では、ロウ本出版以前より翻案を含む新刊四つ折り本という新ヴァージョンからの「アップデート」に着手していた書き込み者の行動を実証することができた。 2.大学の夏期休暇中フォルジャー図書館での資料調査(継続)を実施した。今年度は本課題にとって非常に重要な大著、West and Rasmussen (eds) The Shakespeare First Folios: A Descriptive Catalogue (2012)の出版を見、Cahier Elisabethains誌からの慫慂を受けたので、この大著の書評を執筆し、秋号(issue 82, Autumn 2012)に掲載された。この作業を通じて、本課題の出版形式(書き込みの転写情報の記述方式)についての検討を深めることができた。 3.25年度開催予定である国際シンポジウムのプログラムをほぼ完成させた。シンポジウムでは、残存するファースト・フォリオ中最も高密度の書き込みを有するとされるWest 201の研究を重要テーマと位置づけ、このコピーの書き込みの研究に、指導院生との共同研究としても取り組み、秋のシェイクスピア学会で口頭発表したのち、論文におこして年度末に刊行された学科の紀要に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
海外の図書館が所蔵するフォリオに書き込みがあるかどうかの問い合わせをどのようにすすめるか、The Shakespeare First Folios: A Descriptive Catalogueがファースト・フォリオの所蔵館が他のフォリオを何冊所蔵しているかを調査記載したのを受けて、問い合わせ先についてはある程度その目処がついたが、具体的にどのようなアンケートを作成し、どのように送付・回収するかを含む作業の完全な立案には到らなかったため、達成度は「(3)やや遅れている」に該当すると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
1. 国際シンポジウム開催に伴う専門家との意見交換をもとに、今後の研究方法、とくに、成果発表としての出版形式について構想を固める。 2. ファースト・フォリオの所蔵館を中心に書き込みのあるフォリオについてアンケートを実施する。得られた情報から実際に調査閲覧するフォリオを選択し、可能な限り現地調査、もしくは、画像取得の依頼をかける
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 専門家としてフランスからJean-Christophe Mayer氏(CNRS 教授)を、国内から廣田篤彦氏(京都大学 準教授)を招聘しての国際シンポジウムの開催(7月19日)を実行する。それに先駆けて、18日にはその打ち合わせもかねて両氏と本研究者の間で意見交換会をもつ。 2. 2014年2,3月に海外の図書館に書き込みのあるフォリオの閲覧調査に出張する。 3. 画像所得の依頼、関係分野の研究書の収集も継続して行う。
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