ワイルドの作品と生涯を同時代の性科学の発達、同性愛をめぐる文化・社会的状況などを背景にして辿り、評伝として刊行するという課題を達成することができた。近年書き直されたイギリス同性愛史の最新成果を盛り込み、ワイルドの同性愛、および裁判の意味を辿り直し、ワイルド裁判が従来言われていたようなイギリス最初の同性愛裁判ではなく、旧来のソドミー裁判を踏襲したものであるとして書き直した。同性愛の原因としての変質論をめぐる大陸とイギリスのギャップ、さらにイギリスから追放されたワイルドがフランス滞在時に起きたドレフュス事件にかかわりワイルドがドレフュス事件の早期解決に貢献したという新知見も得ることができた。
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