研究課題/領域番号 |
23520335
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小林 富久子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00063751)
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研究分担者 |
平石 妙子 共立女子大学, 国際学部, 教授 (80060705)
河原崎 やす子 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 教授 (80341808)
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キーワード | アジア系アメリカ文学 / 幽霊物語 / 民族 / 性 / ポスト植民地主義 |
研究概要 |
本年度には、研究代表者の小林および共同研究者の平石、河原崎は、アメリカ、および、アジアの関係国に赴き、アジア系アメリカ文学幽霊物語の背景を探り、かつ、資料収集を行うと共に、関連する学者や作家たちに会い、聞き取り調査を行った。 まず、小林は、2012年8月23日から25日までミシガン大学に滞在、映像学部のマーク・ノーネス教授から太平洋戦争にまつわる日本人・日系人のトラウマおよび死者に関わる映像表象に関する話を聞いた。次いで、26日から9月1日まで、カリフォルニア大学バークレー校に滞在、エスニック学部のエレーン・キム教授、および、映画研究学部のトリン・ミンハ教授から、各々、韓国系とベトナム系の幽霊や憑依などをテーマとする文学や映像作品についての情報と知識を得た。さらに、2013年3月19日から24日まで香港大学に赴き、同大学に滞在中のベトナム系アメリカ人作家モニク・トゥルン氏に会い、その最新作および現在執筆中の小説における霊および超自然現象のテーマについての貴重な知見を得た。 平石は、ハワイの日系作家、ジュリエット・コウノの検討を進めるべく、彼女の作品における死のモチーフや幽霊の表象に関してコウノの母やコウノ自身のトラウマ体験に関係させながら考察を進めた。コウノの場合、仏教の影響が顕著なことから、2013年3月にスタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校に赴き、ハワイにおける仏教の歴史と日系移民社会に与えた影響等について、文献・資料研究を行った。 最後に河原崎は、2013年2月27日から3月6日までロサンゼルスに滞在、リトル・マニラなどフィリピン系幽霊物語の舞台を探訪するとともに、UCLAの図書館で同テーマに関する資料を発掘し、また、関係学者たちと交流することで、本研究に関する新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の達成度は必ずしも満足ゆくものとは言えない。その最大の理由は代表者の小林の友人で著名な米文学者の竹村和子氏が亡くなられ、彼女の論集のあとがきや死後行われたシンポジウム参加のため、今年の前半の多くの時間がとられ、またそのためもともと抱えていた翻訳が滞ってしまい、その分当研究に関わる時間が予定より少なくなったことがあげられる。ただし、ようやく2012年秋に出すことができた翻訳書(モニク・トゥルン作『ブック・オブ・ソルト』)は、アジア系のトラウマや霊的体験を深く掘り下げるもので、翻訳の過程で本研究のテーマを深めるにも大きなインスピレーション源になったことを特筆しておく。さらに、竹村和子氏の米文学論集も超現実的な現象を扱う章を含むことから、今後このテーマを考えるにも役立ったことを付記しておく。
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今後の研究の推進方策 |
2013-14年度は最終年にあたるので、以下のことを計画している。 まず小林と平石はともに、アジア系アメリカ文学論集の編集に従事しており、各々がそれに寄稿すべく、日系、および、韓国系の幽霊語りに関する論文を執筆中である。また、河原崎も、フィリピン系のトラウマについての論文を準備中である。従って、最終年度の研究業績に関しては、確実に実り豊かなものとなるはずである。 また、時間と予算が許す限り、このテーマの研究を広げるべく、ミニ・シンポないしは講演会をアジア系アメリカ文学研究会の枠内で催すことを考えている。 最後に、当然ながら、3年間の総括として充実した報告書を作成するつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、関係図書、および、DVDなど、映像資料をも収集することに研究費を使用する。また、研究者各々がアメリカおよびアジアに再び赴き、作品の舞台を実地に見るとともに、現地での資料収集や聞き取り調査を行うのに研究費を用いる予定である。 また、最終年度にあたるため、研究報告書作成のための印刷代やアルバイト代にも研究費を充てる予定である。
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