研究課題/領域番号 |
23520338
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
森 有礼 中京大学, 国際英語学部, 教授 (50262829)
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キーワード | フォークナー / 南部 / 大戦間期 / ハイブリディティ / クィア / 人種 / 精神分析 |
研究概要 |
平成24年度の主たる研究成果は、論文「『エルサレムよ、我もし汝を忘れなば』における身体性の残余」(『フォークナー』 第14号, 66-81)の公刊、研究発表“A 'Gypsy' Girl Becomes American: The Assimilation of Literary Orphans in Jean Webster's Daddy-Long-Legs(International Symposium Race and Ethnicity in American Literature and Culture: A Redonsideration)及び「兄弟間の確執:ヨクナパトファ・サガの原型としての『埃にまみれた旗』」(関西フォークナー研究会2012年度第1回例会)実施、及び研究ノート「「ジプシー」の少女、アメリカ人になる:『あしながおじさん』におけるアメリカの孤児と同化の(不)可能性」(中京大学『国際英語学部紀要』 第15号, 49-59)の刊行である。いずれも研究計画における「身体表象の変遷の過程を実証的に検証する」ことを目的とし、20世紀前半の合衆国において、人種・民族的他者の身体表象が主流文化のステレオタイプとして形成・流通されること、及びそれがハイブリディティを包含することを確認した。 また米国ミシシッピ大学で開催のFaulkner and Yoknapatawpha: fifty Years After Faulkner及び日本国名古屋大学で開催された国際学会International Symposium Race and Ethnicity in American Literature and Culture: A Redonsiderationに出席(後者は研究発表も実施)し、内外の研究者との研究交流を行い、次年度のための研究総括の準備も整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度においては、研究目的達成のための論文発表及び研究発表を中心とした活動を行う予定であった。具体的には、フォークナーの作品群においてこれまで重要視されてこなかったと思われる文献資料を収集することを目的として、主として国内研究施設への、資料収集のための調査旅行を行い、当該地域・時代に関する文献資料を入手分析し、併せて、研究方針の妥当性確認のため、国内での共同発表への参加も予定されていた。 以上の二点についてであるが、前者については調査旅行を行い、その成果を論文及び研究ノートの刊行という形で達成した。また共同発表ではなく、個人発表となったが、国際学会での関連研究発表を実施したことにより、所期の目標を概ねクリアしたと評価できる。但し、前年度からの懸案であった、優れた先行研究成果を挙げた研究者を招いて実施予定の研究会については、研究協力依頼候補者の都合がつかず、さらに次年度に開催を延期することとなった。そのため、現段階での研究内容の精査及び第三者評価を受けることができておらず、この点においては当初の達成目標を次年度に先送りする結果となったため、全体としては「やや遅れている」と自己評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度においては、前年度までに収集・分析された資料を総合的に分析し、研究成果の発表を行なう。具体的には、国内で研究成果の発表を行う。併せて、最新の資料を調査して、理論面、実証面ともに論文の整合性を高めると共に、これを報告書として発行し、国内外の研究機関に公表配布する予定である。当該年度に計上された消耗品費、旅費、謝金及びその他の予算は、この研究総括、研究発表及び研究成果の公表・発行に充てられる。 当該年度内の研究計画達成目標は、経済的・社会的外因の身体化=内面化の過程を、主としてクイア理論に基づき、テクスト分析を通じて再定義し、それを実証主義的に歴史化することである。これは本研究の結論に当たる部分であり、充分な資料に基づけば達成できる成果であるが、予測される事態として、必要な実証資料の追加調査及び理論面での議論を精緻化する過程で困難が生じることがありえる。こうした事態に対しては、昨年度に引き続き、学際的研究交流を通じて、研究内容の検討を繰り返したい。特に研究交流を目的とした共同研究会は、現行の研究状況のアセスメントのために必須であるため、とくにこれの実施を目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、まず前年度よりの懸案であった研究会を講演会形式で開催するため、講演会講師謝礼として16万円(前年度計上分)の執行を予定している。 また、主として国内での研究成果発表のため、中・四国アメリカ文学会大会への参加を予定している。また併せて研究動向調査のため、日本英文学会全国大会、日本アメリカ分学会全国大会、日本フォークナー協会全国大会などへの参加も予定している。このために旅費として20万円(当初予算額10万円より変更)を計上している。 併せて図書資料などの収集のため、11,6751円の消耗品費を、また研究成果発表(刊行)のため、21万円(当初予算額30万円より変更)を予定している。いずれも平成25年度中に執行の予定である。 なお、上記執行計画は、平成24年度において予定されていた研究会未開催のため未執行となっていた86,751円を含む。
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