研究概要 |
本研究の目的は、奴隷制等の問題を内包する19世紀アメリカへの英米の女性思想家・作家の環大西洋交流による社会的・文化的影響の探求である。 倉橋洋子は、女性作家による奴隷制反対の影響をナサニエル・ホーソーンの作品に読み取り、日本ナサニエル・ホーソーン協会中部支部研究会(2013年5月6日)にて口頭発表後、「『ブライズデイル・ロマンス』―一人の奴隷解放の物語」『東海学園大学研究紀要』第19号(2014)を発表した。 辻祥子は、環大西洋交流を担った英国白人女性や米国元男性奴隷の作品を分析し、「『時の人』は男か女か?―ハリエット・マーティノーが描く「解放」の物語―」と「トランスアトランティック・ダグラス 「ヒロイック・スレイヴ」に見られる再生の証」を『越境する英米文学―人種・階級・家族』(音羽書房鶴見書店, 2014)にて発表した。 城戸光世は、女性作家の環大西洋を中心としたトランスナショナルな活躍に焦点を当て、海を越えた思想的影響関係や、旅や移動の表象を中心に調査し「創作への旅―旅行記作家としてのソファイア・ピーボディ・ホーソーン」を『アメリカン・ルネサンス――批評の新生』(開文社, 2013)にて発表した。 さらに倉橋・辻・城戸は19世紀女性作家の活動を論じた『越境する女―19世紀アメリカ女性作家たちの挑戦』(開文社, 2014)を編集し、倉橋は「キューバにおける捕囚と抵抗――メアリー・ピーボディ・マンの『フアニータ』」を、辻は「女奴隷とトランスアトランティック・アボリショニズム―ジェイコブズの『自伝』と手紙に見る戦略」を、城戸は「楽園の光と影――ソファイア・ピーボディの『キューバ日誌』を読む」を夫々執筆した。また三者は、大杉博昭と共に、メーガン・マーシャル著『ピーボディ姉妹――アメリカ・ロマン主義に火をつけた三人の女性たち』(南雲堂, 2014年3月)を翻訳し上梓した。
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