この研究は、地中海貿易をとおしてイングランド人がいかなる異教徒と遭遇し、そうした他者との遭遇によって、いかにしてプロテスタント・イングランド人としての自己を確立しえたかという問題を、シェイクスピア劇の分析から解明しようとするものである。 在外研究期間であったため、引き続きCambridge UniversityのClare Hallに滞在し、資料収集と論文執筆にあたった。この期間に、3つの論文「イリリアの宦官―『十二夜』とオスマン帝国」、「インドの稚児―『真夏の夜の夢』とヒンドゥー教インド」、「ペルシャの道化―近代初期におけるペルシャ表象」を完成させることができた。更に、過去5年間の科研期間中に遂行してきた研究を1冊の書物にまとめるため、これまで書きためた論文に加筆・修正を行うとともに、序章も執筆した。なお3つの論文のうち、「ペルシャの道化」は、「ペルシャ帝国と『英国三兄弟の旅』」とのタイトルで、『主流』に投稿、審査の後、掲載が決定された。 在外研究は平成27年8月末までであったため、9月に帰国の後、さっそく出版社との打ち合わせに入り、平成28年度の科学研究公開促進費の申請準備をおこなった。 論文「インドの稚児」は平成28年3月にエリザベス朝研究会(筑波大学主催・慶應大学)で発表し、また「イリリアの宦官」は5月の日本英文学会(京大)において発表予定である。
|