2013年度は、ヘミングウェイ文学と映像文化研究を軸に、3冊の図書、2編の雑誌論文、4件の研究発表を行った。 『冷戦とアメリカ』(臨川書店)では、論文「福竜(ラッキー・ドラゴン)・アンド・ビヨンド―エドガー・A・ポウとニュークリア・シネマの政治学―」を書いた。この論文では、冷戦期の身体とハリウッドとの関係に焦点を当て、冷戦/核の時代における映像の政治学を考察した。『ヘミングウェイと老い』(松籟社)では、論文「睾丸と鼻―ヘミングウェイ・ポエトリーと「老い」の身体論―」において、ヘミングウェイの初期詩編と1920年代のコンテクストを交差させ、「老い」の身体の複層性を議論した。『アメリカン・ロード』(英宝社)では、論文「ファミリー・オン・ザ・ロード―『リトル・ミス・サンシャイン』とアメリカン・ドリームの行方―」において、アメリカ映画の「ロード」表象の変容とその意義を論じた。また、占領期の日本における「性」と検閲の問題に関して、論文「「性」を<縛る>―GHQ、検閲、田村泰次郎「肉体の門」―」を寄稿し、ハ・ジンとフォークナー文学の比較考察を行った「繭と穴―ハ・ジン、フォークナー、交叉する語り(カイアズマティック・ナラティヴ)―」がある。 学会発表として、ハリウッド初期の日本人俳優・上山草人を論じた「シャドウ・ビハインド―上山草人と「奇」のハリウッド―」(招待講演)、チーヴァーの短編とペリーの長編映画『泳ぐひと』の交差を論じた「ニューシネマ・ターザン―チーヴァー、ペリー、『泳ぐひと』―」(シンポジウム)、キャノンとアジア系アメリカ文学の問題点を議論した「二つの文革とアメリカの影―イーユン・リー、ハ・ジン、ディアスポラ―」(シンポジウム)、そして田村泰次郎「肉体の門」の再検討を行った「焼跡の「アメリカ」―GHQ、性、田村泰次郎「肉体の門」―」がある。
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