研究課題/領域番号 |
23520348
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
鵜野 ひろ子 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (30145718)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アメリカ合衆国 / アマスト / ボストン / 日米文化交流 / エミリ・ディキンスン / 19世紀 / 米文学 |
研究概要 |
平成20年度より科研費補助金によって調査・研究した結果を、平成23年3月に刊行された、新倉俊一監修『エミリ・ディキンスンの詩の世界』(国文社)の中で、「エミリ・ディキンスンと日本の開国」という題の論文で発表した。しかしこれには字数制限があったため、多くの資料や論議を削除しなければならなかった。そこで、それらを含めた論文を英語で書き直し、制限字数がより多い『神戸女学院大学論集』第58巻第2号(平成23年12月)に、"Emily Dickinson's Seclusion and Japan"(129頁-150頁)として掲載した。 米国マサチューセッツ州アマスト大学で開催されたエミリ・ディキンスン国際学会理事会(7月28日)および同学会年次大会(7月29日~31日)に出席した。年次大会では、Master Classというディキンスンの詩のセミナーで指導者の役目を果たした。同大会後、8月4日までアマストに留まり、マサチューセッツ大学アマスト校の図書館資料室にて、特にディキンスンの友人であり札幌農学校の教頭を務めたウィリアム・スミス・クラーク博士の資料を閲覧・収集した。また同大学の名誉教授にお願いし、クラーク博士が日本から持ち帰った収集物を探し出し、写真撮影させていただいた。彼が日本から持ち帰った植物も調べ、構内に現存する樹木などを撮影した。8月5日にはボストンに移動し、ボストン公立図書館で開催されていた南北戦争資料展を見学、マイクロフィルム室で19世紀の新聞などを閲覧した後、8月7日に帰国した。 平成24年3月にアマストで資料収集し、ボストンでクラーク博士の子孫の一人に面会する予定だったが、家庭の事情で渡航をキャンセルせざるをえなかった。 なお、3月末に私費で2泊3日で長崎に行き、長崎歴史文化博物館や、出島において、幕末の文化交流関係の資料や書籍を少し手に入れることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年3月に予定していた渡米を家庭の事情で断念したので、資料収集が遅れている。 また平成23年8月にボストンでクラーク博士の子孫の一人とお会いしたかったが、予定が合わず、平成24年3月に面談を予定していたが、渡米自体を中止したので、それもキャンセルせざるを得なかった。 あまり一般には注目されていない歴史的事項を調べているので、文学を専門としている自分には何をどう調べるべきかがわからなくなる場合がある。調べてもそれが結果的にディキンスンとは関係がないということがわかったり、あるいは詩人に影響を与えた可能性が大きいことがわかっても、なにぶん19世紀のことで状況証拠だけで確実な証拠がみつからない場合が多い。そのため無力感におそわれる時もある。今も、今後どうするべきか、悩んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように、研究方針に悩んでいるところであるが、以前、エミリ・ディキンスン国際学会の初代会長から、この研究によって日本や東洋の文化がディキンスンに影響を与えたという確実な証拠が見つからなかったとしても、19世紀半ばの当時のニューイングランド地方の人々がどの程度、日本や東洋の文化に触れていたかということを明らかにすることは意義があると、言ってくださった。 また、一つ一つの証明は弱いとしても、あらゆる面から探求し、証拠を積み重ねていけば、総合的に見て、説得力が出てくるのではないかと思う。それゆえ、資料収集は続けなければならないと思う。 そこで、平成23年度の後半(24年3月)に実施できなかった資料収集や面談などを、平成24年度に実施するつもりである。平成24年8月には、エミリ・ディキンスン国際学会の理事会および年次大会がクリーヴランドで開催されるので、それに参加後、アマストでクラーク博士と新島襄についての資料収集の続きを行い、できればボストンに寄って、クラーク博士の子孫と面談する。なお、3月に提出した「支払請求書」では、年次大会後、ワシントンDCで資料収集する予定にしていたが、諸事情により、8月はアマーストで資料収集を行う。そして平成25年3月に、ブラウン大学でディキンスン家の資料を閲覧・収集した後、ワシントンDC(順序は逆もあり得る)で資料収集する。 また、2回の渡米の合間に、これまで集めた大量の資料を整理する。 なお、時間的に余裕があれば、ディキンスン家で見つかった日本の陶器について調べるため伊万里へ、またクラーク博士についての調査のため、札幌に行きたいと思っている。無理な場合は、それらの調査を平成25年度に実行するつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
* 旅費1: 平成24年8月1日~13日。米国オハイオ州クリーブランドでディキンスン国際学会大会に参加、その後アマースト、ボストンで調査、資料収集。 約55万円。* 旅費2: 平成25年3月後半の約2週間。米国プロヴィデンス(ブラウン大学)およびワシントンDC(議会図書館など)で調査、資料収集。 約45万円。* 旅費3: 時間が許せば、札幌か伊万里で調査。約10万円* 図書・資料など物品費: 約10万円。平成23年度の平成24年3月にアマースト、ボストンで資料収集の予定であったが、家庭の事情でキャンセルしたため、その未使用の旅費を平成24年度に回した。合計、120万円使用の予定。
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