本年度は当該研究の最終年であり、19世紀に隆盛を極めた、あるいは端を発するファンタズマゴリア、パノラマ、万国博覧会、写真が作品の主題や文体、イメージへいかなる影響を及ぼしたのかという全体的検証を行なった。特に対象であるヘンリー・ジェイムズとナサニエル・ホーソーンを中心に視覚文化的視座から分析した。 具体的には、国内にて英米文学関連学会に出席すると共に、ハーバード大学やマサチューセッツ歴史協会、あるいはボードン大学にて、視覚文化やメディアに関する検証や資料収集に努めた。それらの研究調査を踏まえて、ジェイムズやホーソーンが当時の「新しい」メディアを積極的に取り込んだことを明らかにし、従来の高踏的イメージと異なるジェイムズの大衆的側面やファンタズマゴリアとホーソーンのゴシック・ロマンスとの関係性について考察をおこなった。 本年度の研究成果としては、「サイエンス・フィクションとしての「痣」―エイルマーは人造人間の夢を見るか?」(『ホーソーン研究』創刊号)が発表され、2冊の共著本『越境する女―19世紀アメリカ女性作家たちの挑戦』(開文社、2014年3月)、『ユダヤ系文学に見る教育の光と影』(大阪教育図書、2014年3月)が上梓された。口頭発表としては、日本ナサニエル・ホーソーン協会第32回全国大会のワークショップ「「天国行き鉄道」を読む」(於:仙台国際センター、2013年5月)で司会・講師を担った。その発表概要はNHSJ Newsletter(2014年2月)にて、 Puritan and Afro-American Allusions in “The Celestial Rail-Road”’と題され公表された。さらに映画論『映画のなかの社会/社会のなかの映画』(ミネルヴァ書房、2011年12月)の書評が『中・四国アメリカ文学研究』(49号)に掲載された。
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