本研究では以下の知見を得た。 1.軍記物語は西洋の英雄叙事詩研究に通常含まれない。しかしどちらも同様の内容を有しており、共通点も大きい。日本文化の中にあって軍記物語は他の形式では成立し得なかったことを具体例で示し、共通概念(英雄文芸)を用いることを改めて提起した。2.近年研究が盛んなディートリヒ叙事詩の語彙研究を進めた。とくに『ヴィルギナール』の一写本が収録されている「リーンハルト・ショイベルの英雄本」における語彙を網羅的に調査し、その使用傾向の一端を明らかにした。3.『ニーベルンゲンの歌』をとりまく状況(近年大きく進捗する研究と教育)に関する現状を報告した。
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