研究課題/領域番号 |
23520360
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今井 勉 東北大学, 文学研究科, 教授 (40292180)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フランス文学 / ヴァレリー / 芸術論 / 生成論 |
研究概要 |
平成23年度の研究実績は、(1)資料調査とヴァレリー芸術論集の翻訳刊行(2)講演会の開催、以上二点に集約される。 (1)資料調査のため、長期休業期を利用した海外出張を二度行った。主要な研究対象コーパスを占める『芸術論集』草稿(1923年から1935年までの作品草稿を収めたNAF19068、および1936年から1943年までの作品草稿を収めたNAF19069の二巻)について、パリのフランス国立図書館西洋手稿部に赴き、マイクロフィルムで、その全体に目を通した。調査の過程で、ヴァレリーと親交のあった何人かの画家についての思い出が語られた未刊行の講演タイプ原稿を完全筆写することができた。また、2012年2月に、筑摩書房より『ヴァレリー集成』第5巻「〈芸術〉の肖像」を刊行し、主要な芸術論テクストの新訳と解説を上梓することができた。このほか、本研究の遂行に必要な関連書籍を購入した。 (2)本研究のテーマと関連する研究者と打合せの機会を設けるかたわら、文学テクスト生成論の分野で射程の広いテーマを設定し、東北大学大学院文学研究科フランス語学フランス文学専攻分野主催による講演会を開催した。本年度はナント大学名誉教授でヴァレリーにも詳しいジャン=リュック・ステンメッツ氏による講演会「『地獄の季節』の二重の誕生」を企画し、多くの聴衆を集めることができた。研究従事者レベルでの研究はもちろん基本であるが、それに加えて、こうした講演会を開催することによって、研究テーマの問題性をより広いレベルで訴え、知的ネットワークの構築と研究の裾野拡大および社会への成果還元に貢献できたことはよかったと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、フランス第三共和制期の代表的詩人思想家ポール・ヴァレリー(1871-1945)の芸術論テクストについて、主にフランス国立図書館所蔵の草稿および関連資料を調査することによって、その生成の舞台裏を明らかにすることを目的とする。具体的には、未だ十分な検討を受けていない『芸術論集』(初版1931年、増補1934年、1936年、1938年、1957年)の草稿を解読し、ドガをはじめとする画家たちとの交流を詳細にたどることで象徴派文学と印象派絵画の関係を再検討し、文化史的な視点から新たなヴァレリー像を構築することを最終目的とする。本年度は、『芸術論集』草稿(1923年から1935年までの作品草稿を収めたNAF19068、および1936年から1943年までの作品草稿を収めたNAF19069の二巻)について、フランス国立図書館西洋手稿部に赴き、マイクロフィルムで、その全体に目を通した他、ヴァレリーと親交のあった何人かの画家についての思い出が語られた未刊行の講演タイプ原稿を完全筆写することができた点で、おおむね順調な達成を果たすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画通りに研究を推進する。本研究の対象となる主な資料体は、マイクロフィルムの検討によって、NAF19068が321紙葉(versoを数えればほぼ二倍の640頁ほど)、NAF19069が384紙葉(同約760頁ほど)であることがわかっている。完全筆写が理想であるが、資料調査のために滞在できる時間は限られているため、基本的には「ドガ ダンス デッサン」をはじめとする主な芸術論テクストを中心に、それらをめぐる草稿(タイプ原稿を含む)を集中的に活字転写する。選定したコーパスの筆写が完了した段階で、読み取り上の疑問点を明らかにし、閲覧許可を得られればオリジナルを検証する。また、前年度に引き続き、広い意味での文学テクスト生成論に関する講演会を開催するかたわら、必要文献の収集を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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