古代ローマの恋愛詩人、プロペルティウス(前50年~前16年)が自作品において表明している詩論に着目した。ヘレニズム文学では、完成度の高い小品を重んずるカッリマコス主義が主流だった。プロペルティウスは、作品内部でカッリマコス主義を標榜していることから、従来その叙事詩忌避の側面が強調されてきたきらいがある。本研究では、この詩人がカッリマコス主義を墨守することを確認しつつ、同時にホメロス叙事詩への強い傾倒があることも指摘し、最終巻(第4巻第7歌および第8歌)においては、ホメロス作品への強力なオマージュが認められ、エレゲイア恋愛詩と叙事詩の見事な融合が実現していることを解明した。
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