研究課題/領域番号 |
23520369
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松浦 純 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (70107522)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ルター / 古文書学 / 中世神学 / 修道院の敬虔 / 神の義 / 自己認識 |
研究概要 |
一方で、ここ10年ほどを中心に関連する専門研究文献を収集、問題設定や視点、また解釈の概観を得た。他方、ルターの「神の義」新理解獲得の時期の問題で焦点となる「第1回詩篇講義」自筆草稿は、それぞれの箇所の筆記時期・筆記順序が必ずしも明らかでなく、そのことが上記の問題にとって重要になると考えられる。そのため、両草稿をファクシミリ版・pdf版で検討したのち、ドイツ連邦共和国ヴォルフェンビュッテル・アウグスト公図書館およびドレスデン大学図書館で特に許可を得て、現物にあたることができた。また、ヴィッテンベルク福音主義神学校図書館では、これに続く時期のヒエロニムスへの注記の現物を、これも特別な許可を得て調査することができ、現行校訂版(2000年刊行)に多くの誤読があることが判明した。さらに、イエナ大学図書館では、後年の回想の多くを含む、1530年代以後の「卓上談義」の筆記テクストの現物を調査し、かつ関係する研究プロジェクトの様子を知ることができた。こういった平成23年度の調査ですでに多くの点を確認することができたが、特に草稿の分量の多い第1回詩篇講義はじめ、字体・インク・紙の相違等の詳しい分析は時間がかかるため、調査は今年度以降も継続する。また、そのような古文書学的分析と並んで、第1回詩篇講義テクストの分析からは、ルター初期の決定的転回を捉えるには、「神の義」概念ばかりでなく、「審判」、「告発」、「自己告発」、「自己認識」、「神認識」等の、関連する概念ないし観念の内実および文脈に関する、神学伝統との比較の重要性が、これまでに増して明らかとなり、主にミーニュ編「教父全集」に集められている古代・中世のテクストから、関連の箇所を集め、分析を始めた。この思想史・敬虔史的な伝統との突合せと、古文書学的分析とを関連付けることによって、研究課題をもっともよく果たすことができる、という見通しを得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究過程でとくに困難が生じるということはなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、また、23年度に達成されたことを受けて、古文書学的調査・分析と、テクスト解釈、伝統との比較を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画どおりに考えている。
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