平成13年度は、それまでの調査を継続し、「第1回詩篇講義草稿」を成す2資料、ヴォルフェンビュッテル蔵「ヴォルフェンビュッテル詩篇」、ドレスデン蔵「詩篇釈義草稿」の、製本状態、紙の透かし分析などにわたる詳細な調査による成立順の分析を行なったことに第1の重点があった。出張研究ではその他、書籍、データベースなどの調査を行なった。3年間に渉るこの資料研究の一端は、「第1回詩篇講義」の草稿の特徴とその伝承過程を述べる論文として、「Meilensteine der Reformation(宗教改革の里程標)」で公刊された(平成14年2月)。マインツでの専門研究者国際コロキウム(平成12年2月)の成果をまとめた単行書であるが、その際の筆者の発表をその後の研究に基づいて大幅に拡大したものである。また、初期ルターの聖書釈義のひとつの到達点である「聖書は自らの解釈者である」という解釈学的命題の成立過程と内実について、12年8月の国際ルター学会(ヘルシンキ)での分科会で発表していたが、これもその後の研究成果を加えて大幅に拡大し、単行書「Autoritaet und Autoritaeten beim jungen Luther(若きルターにおける権威・諸権威)」(2014年刊行予定)所収論文として編纂者に送付した(13年9月)。さらに、11年度、12年度に現地調査・解読に当たったヴィッテンベルク蔵の、ルターによるメランヒトンの聖書釈義への欄外注記(1530年代半ば、未刊)も、解読上の諸問題はじめ、中世神学、後のプロテスタント正統主義神学、さらにルター初期聖書釈義との比較等に関する注解を付したエディションにまとめた(12-13年度)。これは、「Lutherjahrbuch (ルター年鑑)」2014年号に掲載予定となっている。研究プロジェクトの成果全体をまとめる大規模な著作にはなお時日を要する。
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