研究概要 |
平成25年度は、西欧ユダヤ主義およびキリスト教における「救済」の概念をさらに考察していく過程で、次の二つの研究上の重点を置くことになった。一つは、これまでの思想史的コンテクストからの研究と並んで、聖書学的な方向からの研究課題である。これは、例えば大貫隆によるベンヤミン、アガンベン研究の方向性をさらに深めたものといえる。もう一つは、ベンヤミンの翻訳概念における神学的特質をさらに検討することにより、西欧ユダヤ主義・キリスト教的思考の特質を明らかにするという課題である。 これらの方向は、具体的には、モスクワおよびチューリヒにおける国際セミナーでの口頭発表(The Russian Avant-garde from and its impact on the Perspective of Walter Benjamin; Translation/Transformation. Fuer eine Theorie der "verfremdenden“ Uebersetzung, それぞれプロシーディングスおよび研究誌掲載予定)、および学内での研究プロジェクト(「聖書の日本語と翻訳の歴史」)、さらには、発表そのものは科研の期間外ではあるが、この研究の直接の成果であるボローニャのセミナーでの発表 (“The Translator’s Task” in the Context of Translation Studies) といったかたちで結実している。 この科学研究費による研究の成果を年度内にまとまった研究書のかたちで公にすることは時間的な制約のためかなわなかったが、今回の研究成果は、私自身が研究代表者をつとめる次の科学研究費による研究プロジェクト「西欧アヴァンギャルド芸術における知覚のパラダイムと表象システムに関する総合的研究」に引き継がれ、展開されてていくことになる。
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