本研究は、ヴァルター・ベンヤミンにおける近代技術と身体性をめぐる問題領域と、それとは一見対極的な位置を占めるかのように見える神学的思考のコンテクストとを結びつけることによって、ベンヤミンの思考の特質を明らかにすることを目指すものである。ベンヤミンが「複製技術論」のなかで論じている近代技術とそれに伴う知覚の変容(とりわけ、現代のハイパーテクスト的なメディア理論へと敷衍されるような断片の再構成とモザイク的な知覚の様式)は、他方ではベンヤミンにとって「救済」を目指す神学的思考モデルと重ね合わされている。この神学的思考においては、非歴史的な「時間」概念がきわめて重要な要素となっている。
|