東西文明の接点で多民族国家でもあったハプスブルク帝国の地政学的位置どりに着目した当共同研究は、歴史学的・実証的古文献調査(山崎)、広大な分野の文献渉猟とフィールドワーク(市川)、言語の問題を掘り下げた分析(安徳)という研究アプローチの違いともども、「歌劇と18世紀の対トルコ・北アフリカ(山崎)」「カフカ、リルケの散文作品における正教ロシア、ユダヤ、アジアの影響(市川)」「ホフマンスタールと古代ギリシャ(安徳)」という対象領域の広がりによって、オリエントというテーマが含み持つ地域・時代・ジャンルの多様性を浮き彫りにし、にもかかわらず全ての核心にある「他者性」の問題を再確認するに至った。
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