研究課題/領域番号 |
23520377
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山上 浩嗣 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (40313176)
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キーワード | 無知 / 『パンセ』 / 正義 / 自己愛 / 慈愛 / 人間の尊厳 / モンテーニュ / パイデイア |
研究概要 |
本研究課題の三つの主要な方向性は、1)パスカル人間学の総合的研究、2)パスカル人間学の「起源」の研究、3)パスカル人間学の「影響」の研究である。 1)に関しては、パスカルにおける「無知」の問題に集中的に取り組んだ。パスカルは主として『パンセ』において、人間の無知を「正義」「学問」「死後の運命」という三つの領域に認めている。それぞれの「無知」の分析を通じて、パスカルが最終的に、自己の利己的な欲望の抑制と、他者および超越者への愛という道徳を説いていることを明らかにし、その成果を2013年3月刊行の『大阪大学大学院文学研究科紀要』53号に掲載した。また、武田裕紀氏(追手門学院大学)と共同で「パスカル没後350年記念シンポジウム」を企画・実施し、その場で「パスカルの三つの無知」と題する研究発表を行うなど、いくつかのパスカルに関する講演およびシンポジウムを実施した。 2)に関しては、モンテーニュ『エセー』の読解を通じて、モンテーニュにおける「人間の尊厳」の観念および、書物と旅を通じて形成される「判断」の観念の解明に取り組んだ。その成果の一部を、次の二つの口頭発表において披露した。「パスカルにおける人間の尊厳」(ラブレー・モンテーニュ研究フォーラム、神戸大学、2012年10月)、「モンテーニュのパイデイア―書物と旅による「判断」の形成」(平成24年度大阪大学文学研究科共同研究「ヨーロッパ文化としてのグランドツアー」研究会、北海学園大学,2013年3月)。 3)に関しては、今年度は顕著な進捗はなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度の研究計画は、当初以下の通りであった。 ①博士論文の日本語版執筆に着手し、半分程度を仕上げる。②「パスカルにおける<無知>」に関する論考を公刊する。③パスカルによるモンテーニュ思想受容に関する研究を進める。④デカルト書簡集の翻訳を進める。⑤『ポール=ロワイヤル論理学』ならびに『テレマコスの冒険』の翻訳を進める。 上記のうち、①、②、③については予定通り進められた。④はやや遅れ、⑤はほとんど手を着けられなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、次の作業に集中的に取り組みたい。 ①博士論文の日本語版の執筆。 ②パスカルによるモンテーニュ思想受容に関する論考の発表。 ③知泉書館刊行予定の、デカルト書簡集の翻訳(担当箇所)の完成。 また、『ポール=ロワイヤル論理学』の読解も進めていく所存である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主としてフランスルネサンスおよび近代文学・思想関連資料、ノートパソコンおよび関連物品の購入に使用される。また、9月には資料収集をかねて、パリおよびボルドーへの出張を予定している。
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