研究課題
本研究は、文学、舞台芸術、映画、絵画など、さまざまな領域に広がるアヴァンギャルド芸術運動について、普遍的な考察を可能にする美的概念を規定することを目的とする。25年度の課題は、特定の言語文化圏を超えたアヴァンギャルド芸術の特徴に関して考察し、前年度までの研究成果を国際的なコンテクストで比較検討することだった。25年度の研究の成果は次の通りである。1.アヴァンギャルド運動はコスモポリタニズム的な現象である。それぞれの国に固有の特徴は個別にとらえられるべきではなく、国際的なコンテクストで理解されるべきである。たとえばロシアのアヴァンギャルド芸術は地理的・歴史的理由により、ドイツとフランスのアヴァンギャルド芸術と深い関係にある。その相互の影響は、ただ単に思想や書物、絵画等の芸術作品が国を超えていったために生じたものではなく、芸術家自身が国境を越えて活動したために引き起こされたものであった。その一例はイリヤ・ズダニエヴィチである。彼はロシアで詩人としての活動を始め、革命後はフランスに移住し、パリの文化シーンに大きな影響を与えた。2.アヴァンギャルド運動の、国の枠組みを超えた普遍的傾向は、芸術家がどこに行こうともすぐに受け入れられ、外国でもさらに力を発揮する素地を作った。パリやベルリンのようなアヴァンギャルド運動の中心地は一種の「創発」ととらえることができる。3.アヴァンギャルド運動の普遍的特徴とは、シンクレティズムの傾向(ひとつの芸術作品の中に言語的テクスト、図像、音響、動きなどの組み合わせが存在する)とパフォーマンス性である。このような特徴は現代にまで受け継がれ、メディアの発展と関連しながら、新しい芸術の可能性を広げている。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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