マラルメ記念館が保管する詩人の蔵書すべてを精査し、書込み等の有無を含めた書誌データを蓄積した。これに書簡集や古書店などの目録から集めた情報を加え、330頁程の『ステファヌ・マラルメの書斎』を完成させることができた。詩人が読んだと思われる約1800冊の本を著者のアルファベット順、そして刊行年順に整理した同書は、彼を中心に形成されていた19世紀末フランスの「文学場」の一様態を書物という具体的なものによって可視化してみせただけでなく、詩人の読書経験をも明らかにしている。それゆえ、マラルメが夢想する「文芸共和国」について考察するためにも、また彼の思考形成を問い直すためにも貴重な基礎資料となるだろう。
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