研究概要 |
ロシア象徴主義の先駆者であり、ネオ・ヨアキム主義の理論的支柱であったドミトリー・メレシコフスキー(1866-1941)から多大な影響を受け、「第三の国」Das dritte Reich を待望したドイツ語圏の知識人は少なくない。同思想はナチスドイツが標榜した「第三帝国」Das dritte Reich として一般的に知られ、政治思想史の分野で数多くの研究が存在する。しかし、第一次世界大戦以前の状況については十分に研究が進んでおらず、特にドイツにおけるメレシコフスキー受容については、若干の例外を除いて、ドイツ本国においてもいまだ十分な研究成果を得ていない。そこで本研究は、同受容に関して、研究代表者がこれまで行ってきた研究成果を先ずはまとめ、2010年夏にポーランドで行われた国際独文学会(IVG)の論集にてドイツ語論文「Neo-Joachismus auf der "geistigen Insel" in München. Kandinsky, Mereschkowski und Thomas Mann」(ミュンヘンの「精神の孤島」におけるネオ・ヨアキム主義 ―カンディンスキー、メレシコフスキー、トーマス・マン―)を公にしたその後は、『第三帝国』(1923年)の著者メラー・ファン・デン・ブルック(1876-1923)がメレシコフスキーの協力を得て1905年にドストエフスキー全集を公刊したことを、目下、調査中である。 なお、研究代表者は新たに科学研究費助成事業研究「ドイツの文学・思想におけるトポスとしての「黙示録文化」―「終末」の終末は可能 か―」(平成26-30年度、基盤研究B)を獲得したので、今後は新たな研究プロジェクトの枠内で上記研究も継続する。
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