研究課題/領域番号 |
23520391
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
石川 清子 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 教授 (30329528)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マグレブ / パリ / ジェンダー / 移民 / 郊外 / アルジェリア戦争 / 移民第二世代以降 / 小説 |
研究概要 |
初年度は主に以下の研究活動を行った。1)基本的資料(書籍・文献複写・視聴覚資料)収集。関連するデータベースにて書籍類を検索し、これを購入、収集した。またフランス国立図書館、アルジェリア文化センター(パリ)での資料収集を行った。これらによって研究テーマの作品群を時間軸に沿ってマッピングすることができた。2)研究の基盤となるテーマでの研究会等発表。3月に刊行した翻訳、アシア・ジェバール『愛、ファンタジア』の分析を基盤に国内では日本フランス語フランス文学会春季大会ワークショップ、中東現代文学研究会、国外(フランス)では le Cercle des amis d'Assia Djebar にて発表を行った。昨年まで専心した翻訳作業を本研究テーマと連結させる機会となった。3)2)のフランスでの研究発表の機会に海外研究者との情報交換ができた。この機会に研究会主宰者を介して、A.ジェバールご本人と再会する機会を得て、さらにパリのジェバール研究者との意見交換を行うことができた。現在進行形で活動する作家の存在を強く認識するとともに、アルジェリア出身フランス在住の研究者たちとの交流を通じて、マグレブ仏語表現文学のなかでのジェバールの位置づけを再認識した。4)1)でイメージできるビブリオグラフィーのうち、マレク・ハダッド、アブデルカデール・ハティビ、レイラ・セバール、タハール・ベン・ジェルーン、アクリ・タジェールらの作品を、移民労働者、留学生、移民第二世代等のカテゴリー分類を想定し読んだ。かつ、パリ在住アルジェリア人にとってのアルジェリア戦争の影響を考える機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集をしつつ、当該テーマのビブリオグラフィー作成のイメージができあがった。資料も意識的に集めることでこれまで知らずにいたものを入手できた。 複数の研究発表を通じ、本年度は「アルジェリア戦争」というトポスが大きく浮かび上がってきた。2012年がアルジェリア戦争50周年にも当たり、この戦争の再認識が歴史の領域のみならず多方面からのアプローチによって開始されている。この主題は本研究のテーマのみならず、アルジェリアの仏語表現文学を考える時、大きな軸となる問題系だろう。 昨年のジェバールの翻訳から出てきた問題点を別の女性作家、特にレイラ・セバールの初期作品に移行して考える方向性ができた。フランスにおけるマグレブ系移民労働者と次世代にとって、大きな節目である1980年代を「パリ」という場所から考える重要性を認識した。 他方、大きい括りでマグレブ仏語小説におけるパリの表象を考えた場合、対象となる一時資料の作品数が多く、十分納得のいく数の作品を読みこなせるか時間的に余裕がないことも認識しつつある。鍵となる作品を能率的にとりあげられるようにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
前セクションで言及したレイラ・セバール作品のパリを中心に美術館、本、街路、風俗とマグレブ系移民第二世代の関わりを中心に分析し、論文にまとめたい。これを出発点として「移民第二世代」と首都パリ、及びその郊外という視点から第二世代の小説群を読み進めて行く。 海外でのシンポジウム参加と発表を予定しているので、年度前半は上記の研究と同時進行して発表準備を行いたい。 フランスでの調査の機会もあるので、その際には資料収集を中心に日本では入手できない文献を読むことにしたい。 日本でのマグレブ仏文学紹介の最良の方法は翻訳によってである。翻訳を充実させるべく、研究会や翻訳シリーズの選定に当たるワーキンググループの立ち上げも検討したい。国外の研究者ともそうだが、それ以上に国内研究者との横のつながりのルート確立も考え、この分野の研究の基盤を作る必要がある。 以上、論文・海外での口頭発表・国内の研究会立ち上げ・翻訳という4つの主要軸を基盤に完成年度につなげて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は勤務校の出張の機会や個人的出費で海外での資料調査が行えた。よって旅費にあてた予算が消化できず、これを旅費に累計し平成24年度使用としたい。 累計した旅費の総額は約66万円になるが、資料収集と研究発表のための2回の渡航費とする。具体的には1)アルジェリア・日本学術会議(アルジェリア、オラン工科大学)での口頭発表と2)フランス国立図書館やアラブ世界研究所(パリ)での資料収集。 物品費、人件費、その他の費用は予定通り、物品費は書籍類購入、人件費は資料整理のアルバイトや専門家による研究・調査サポートの謝礼に当てる予定である。
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