研究課題/領域番号 |
23520391
|
研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
石川 清子 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 教授 (30329528)
|
キーワード | マグレブ / パリ / オリエンタリズム / 郊外 / アルジェリア戦争 / ハンマーム / 移民 |
研究概要 |
今年度は主に以下の研究活動を行った。1) 国内・国際シンポジウムでの口頭発表。5月にはアルジェリア、オラン工科大学にて行われたシンポでマグレブ女性作家とハンマーム(公衆浴場)について仏語発表を、12月にはマグレブ文学研究会を立ち上げムルード・フェラウン記念シンポにてレイラ・セバールとフェラウンの父の視点からアルジェリア/フランスの二重性を述べた。 2) 書籍収録論文や研究ノートの執筆。昨年、パリで発表した日本におけるジェバール翻訳とマグレブ文学の現状について、パリを拠点とするジェバール研究会刊行の書籍に論文を掲載した。また、パリとフランスの美術館収蔵のオリエンタリスム絵画とアルジェリア女性作家の関係を示した論を書いた。また、勤務校所属学科刊行の書籍に、フランス語/植民地/女性をテーマにした論考、文学と国際文化学に関わる研究ノートを執筆した。 3) 世紀末パリを舞台に展開するレーモン・クノーの小説の翻訳刊行。パリを主題にする意味でマグレブ文学研究と間接的に多くの情報を得ることができた。 4) 1)で言及したマグレブ文学研究会の立ち上げの意味は大きい。日本において当該文学の研究を根づかせ日本発信でこの文学を読んでいこうという意思表明である。3月には定例研究会を行い、今後の展開の基盤を作ることができた。 5)夏期にフランス国立図書館及びパリ在マグレブ文学研究に関連する施設にて、資料収集を行った。また、この機に在仏ジェバール研究家と情報交換ができた。また1)においても、オランの活発な文化活動発信の拠点であるCRASCにおいて、フランス発ではなくアルジェリアでのマグレブ仏語文学の研究者と意見交換できたことも大きな成果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究活動は、当初のテーマであるマグレブ仏語小説におけるパリというトポスから少し逸脱した感がある。とりわけ、5月のオランでのシンポジウム発表、12月のマグレブ文学研究会発足とそれに伴うシンポジウム準備等で、当該テーマに直接関わる研究に密接に取り組めなかった。しかし、国内外での発表を通してマグレブ文学研究のネットワークを大きく深く広げる事ができたことは予想外の成果であり、今後の研究を進めていくうえで大きな協力、推進力となるはずである。 今年度はマグレブ系移民第二世代の女子にとってのパリのマッピングという視点からレイラ・セバールの作品を重点的に読めた。マグレブ系移民第二世代にとって、大都市とりわけパリが果たす役割は重要で、80年代フランスにおける彼女らの姿をセバール作品から考察した。これは当初計画どおりである。 Le cercle des amis d'Assia Djebar 刊行の論考集出版に参加することができ、アルジェリア文学の拠点としてのパリという場の重要性を実感できた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は研究最終年度であるので、これまで読んできた作家の作品を俯瞰して、パリとマグレブ文学の関わりを概観した論文を執筆する予定である。また、レイラ・セバールと同様、フランスにおけるアルジェリア移民女性を映画と小説で描くヤミナ・ベンギギの営為に切り込み、文学と映画の交差と対話の側面を考察したい。 マグレブ仏語小説の日本での紹介を本格化するため、今後翻訳すべき作品を決定し作業に着手する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
夏期休暇中の資料収集と研究者との情報交換のためのフランス滞在費、11月に予定されているティジ=ウズ(アルジェリア)での国際シンポジウム発表のための渡航費が主な使用となる。あとは文献複写費、資料整理のための人件費に充当する予定。
|