今年度は最終年でもあり、まとめの意味で以下の研究活動を行った。 1)翻訳。レイラ・セバールの1980年代の代表作抄訳。 2)書籍紹介。レイラ・セバール『ファティマ、辻公園のアルジェリア女たち』(1981)のブックガイド。 3)発表・講演。アルジェリアで初めて開催されたアシア・ジェバールの国際シンポジウムで日本語訳の翻訳者の立場からジェバール作品を分析し発表した。また、日本アルジェリア協会の講演会でアルジェリア仏語文学の概観を講演。中東現代文学研究会例会にて、アルジェリア移民第二世代の映画監督・作家、ヤミナ・ベンギギの映画『インシャーアッラー日曜日』を同題のテキストと関連させて、70年代フランスにおけるアルジェリア移民第1世代の女性の状況について紹介した。 4)調査と資料収集。パリの複数の図書館と研究所にて資料収集。主に定期刊行物の論文収集。現在絶版となり入手不可の作品を図書館で閲覧したり、古書として探す。現地調査として、マグレブ仏語小説におけるバルベス(パリ)の表象についてバルベス探索。バルベスを通じて、パリにおける主にアルジェリア移民労働者のネットワークとその歴史が複数の小説作品と照らし合わせて浮かび上がってくる。また、ジェバールを中心に研究が進んだが、作家の第2小説 Les Impatients の主人公の経験するパリは著者本人のパリ体験とも読め、イスラーム圏の女性(ここでは知的階級)が見たパリとして、後期小説の著者にはないパリ表象が認められる。
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