研究課題/領域番号 |
23520392
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
村田 京子 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60229987)
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キーワード | フランス文学 / 絵画 / ジェンダー / 女性作家 |
研究概要 |
6月20日から22日にかけて、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学でジョルジュ・サンド国際学会(Ecrire et l'ideal : la recherche de George Sand)が開催され、"La figure ideale de la femme peintre dans l'oeuvre de George Sand"というタイトルでジョルジュ・サンドにおける理想の女性画家像に関する研究発表を行った。発表者はフランス、ベルギー、アメリカ、カナダ、スコットランド、ロシアなど世界各国の研究者54名にのぼり、活発な質疑応答がなされ、筆者の発表も高い評価を得ることができた。 12月14日には、大阪府立大学女性学研究センター主催の女性学講演会で、「テオフィル・ゴーチエと造形芸術―ゴーチエの「石の夢」―」というタイトルで研究発表を行った。発表では、ゴーチエの小説『カンダウレス王』を取り上げ、カンダウレス=ゴーチエが「画家・彫刻家」の眼で女性を見ていること。それがピグマリオン神話につながり、さらにはメデゥーサ神話との関連にいたる経緯を詳細に追った。発表にあたっては、アングル《オダリスク》、クレザンジェ《蛇にかまれた女》、プラディエ《ニュシア像》、ルーベンス《メドゥーサ》などの絵画・彫刻作品との関連をパワーポイントを使って説明し、絵画と文学テクストの相関性をジェンダーの視点から探った。 平成26年1月30日には名古屋市立大学で「ロマン主義的クルチザンヌからゾラのナナへ―」というタイトルで講演を行い、ロマン主義的クルチザンヌと一線を画すゾラの娼婦像を見極めるために、ロマン主義文学からゾラの『ナナ』に至る娼婦像の変遷を、それぞれの女性像に関わる絵画的表象と結びつけながら考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的の1番目に挙げた「19世紀フランス・ロマン主義文学と絵画の相関性を、小説構造や小説美学と密接に関連させて考察・分析する」に関しては、ジョルジュ・サンド、テオフィル・ゴーチエの小説を取り上げて文学と絵画の相関性を分析し、絵画が小説構造に果たした象徴的な役割を明らかにした。 2番目の研究目的「文学テクストに現れる絵画を、特にポルトレを中心に、ジェンダーの視点から検証する」に関しては、ゴーチエの『カンダウレス王』における登場人物のポルトレに焦点を当て、ルーベンスやアングルなどの絵画と関連させ、ジェンダーの視点で探り、新しい知見を発見したと自負している。 3番目の研究目的「女性作家の描く画家像と男性作家の描く画家像との違い、および芸術論の違いを明らかにする」に関しては、サンドの『彼女と彼』、『ピクトルデュの城』で描かれる女性画家像、男性画家像の違い、およびバルザックをはじめとする男性作家の描く画家像の違いを明らかにし、19世紀フランスにおいて、女性が職業画家になることの困難さを浮き彫りにした。
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今後の研究の推進方策 |
1.フランス・ロマン主義の先駆けとみなされる、スタール夫人の作品(『コリンヌ』『デルフィーヌ』)を取り上げ、絵画との関連をジェンダーの視点で探る。 2.本研究の最終年度となるので、これまでの研究成果をまとめ、本として出版する。 3.上記の研究を進めるために、芸術関連、フランス文化・文学関連の図書や研究論文など、さらに幅広く資料収集をはかる。そのためにも渡仏し、関連図書館で資料収集をすると同時に、ルーヴル美術館、オルセー美術館など主要な美術館を訪れ、絵画に直接触れる機会を持つ。また、国内外の学会、シンポジウムなどに参加して研究発表を行うと同時に、関連の研究者と意見交換を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度に研究成果をまとめて、本として出版する計画があり、出版費用にあてるため。 研究成果を公表するために、本の出版費用にあてる。
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