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2011 年度 実施状況報告書

メヒティルト・フォン・マクデブルク『神性の流れる光』の思想的、社会的背景について

研究課題

研究課題/領域番号 23520393
研究機関学習院大学

研究代表者

狩野 智洋  学習院大学, 付置研究所, 教授 (90329003)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードメヒティルト・フォン・マクデブルク(ドイツ) / ベギン(ベルギー、ドイツ)
研究概要

清貧を旨とするフランシスコ会の成立及び分裂の事情(思想背景)を調べ、半僧半俗の生活をしていたベギンたちに対する同会の影響を研究した。当初は聖フランシスコの言行録がベギン運動に与えた影響を念頭に置いていたが、研究を進めるうち、既に在世中にフランシスコ及びその所謂兄弟たちの言行がヨーロッパの各地に伝わり、社会に影響を及ぼしていたことが判明した。その一方で、影響がフランシスコ会からベギンに対する一方的なものではなく、ベギンからフランシスコ会の修道士に対しても及んでいたことが分かった。 また両者の運動が、幾度も改革が行われたにも拘わらず、改革と堕落を繰り返す既存の修道院と教会に対する不信と反発から生まれた、非聖職者による当初の予想を上回る広範囲な当時の宗教的潮流の一部であることが認識できた。従って、ベギン運動とフランシスコ会の運動のみならず、当時の教会から異端視されたいくつかの宗教運動をも視野に入れて研究する必要があることが明らかとなった。 ベギンたちが必ずしも宗教的情熱からのみベギンとしての生活に入ったとは考えにくい為、当時の社会状況、特にベギン発祥の地であり、ベギン運動が盛んであったとされるフランドル地方及びライン川地方の12世紀~14世紀の都市の状況について研究を始めた。 また、当時の宗教的潮流が男性聖職者と所謂聖女たちの相互交流から生まれ、かつ支えられていたことも明らかとなった。従って、今後研究を進める上ではこの点を視野に入れて研究することが肝要であると認識した。 上記の成果はメヒティルト・フォン・マクデブルクの『神性の流れる光』の社会的、思想的背景を考察する上で、大きな意義を持つものであると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初は聖フランシスコの言行録がベギン運動に及ぼした影響を考察する予定であったが、言行録が出る以前の、フランシスコの生前から彼とその所謂兄弟たちの言行がヨーロッパ各地に伝わり、影響を及ぼしていたことが判明した為、言行録とその影響に関する研究があまり有効でないことが分かった。 その一方で、フランシスコ会とベギン運動が相互に影響を及ぼしていたこと、更に両者の運動がより大きな当時の宗教的潮流の中に位置していたことが分かり、メヒティルト・フォン・マクデブルクの『神性の流れる光』の社会的、思想的背景を当初の予定よりもより広範に考察することが出来ることとなった。 しかし、研究の進展に関しては、当初の計画より進んでいるわけでも、遅れているわけでもないので、概ね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

今後はベギン運動と他の宗教運動との関係を当時の社会状況を考慮しながら研究するが、その際、ベギン一般に関わることと、メヒティルト・フォン・マクデブルク個人に関わることを可能な限り明確に区別しながら進めるつもりである。 また、それと平行してテクストの読解を進め、オリゲネス、グレゴリウス一世及びクレルヴォーのベルナールらの雅歌解釈と『神性の流れる光』の共通点及び相違点を研究し、後者の独自な点を明確にする。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画ではドイツで資料収集を行う予定であったが、ドイツで収集する資料が予想以上に順調に入手できている一方で、ベルギーに現存する、当時ベギンたちが共同生活を送っていたベギン・ホフを調査し、資料を収集する必要があると判断したため、目的地をドイツからベルギーに変更し、旅費として、研究費の一部を支出する。 本年度同様、資料収集(主に書籍)の為に支出し、また、電子化した資料を使用する為の機材の購入に支出する予定である。

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公開日: 2013-07-10  

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