研究課題/領域番号 |
23520393
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
狩野 智洋 学習院大学, 付置研究所, 教授 (90329003)
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キーワード | メヒティルト・フォン・マクデブルク / ベギン / 煉獄 / 中世の宗教運動 |
研究概要 |
メヒティルト・フォン・マクデブルクが半僧半俗のベギンであったため、ベギンに関する資料収集と研究を主に文献基づいて行うと同時に、ベギン発祥の地と言われるベルギーのフランドル地方に現存する、当時多くのベギンたちが共同生活を送っていたベギン・ホフを数カ所訪れ、調査研究を行った。フランドル地方のベギン・ホフには大規模がものが少なからずあったが、発達した織物業故に巨万の富が当時のフランドル地方に集中したことがその背景としてあった。こうした事情がドイツ、特にメヒティルトが暮らしていたと考えられるマクデブルクにも当て嵌まるかどうかは疑問である。Simonsの研究によれば、都市の羊織物業者がベギンを安価な労働力として必要としていた一方で、ベギンは織物業者から仕事を請け負うことで自らの生活を支えていた。この業者とベギンの利害が一致していたことにより、フランドル地方に多くのベギンが存在し得たと考えられる。 他方、Reichsteinの研究及び資料によれば、ドイツではベギンが機織り等の世俗的な仕事により生計を立てることに対し批判的な態度が見られ、病人看護や日々の祈祷、ミサへの参加等主教的な生活を送ることが特に義務づけられ、病人の看護を担う者としての重要性が時代を経るに従って増していった。 とは言え、何れのベギンにも死者のための祈りが重要な任務とされているが、その際に大きな影響を持ったのが「煉獄」という概念であり、彼女たちの祈りにより自分や先祖たちが死後「煉獄」から救われることを期待してベギン会を創設した者が多かった。 これらの成果はメヒティルト・フォン・マクデブルクの『神性の流れる光』の社会的、思想的背景を考察する上で大きな意義を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
限現存資料が限定されていることから限界はあるものの、ベギンを取り巻く当時の社会環境や生活環境がある程度明らかになり、メヒティルト・フォン・マクデブルクの『神性の流れる光』の思想的背景の一部が明らかになってきたので、研究の進展はほぼ当初の計画通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き当時の宗教運動に関する研究を進め、時代背景と思想背景をより一層明確にすると共に、オリゲネスやグレゴリウス一世、クレルヴォーのベルナールらの『雅歌解釈』に関する研究を行い、この方面からも思想的背景を可能な限り解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として資料収集(主に書籍)のために支出するが、収集した資料の電子化とその保存及び使用に関する機材等の購入に支出する。
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