研究課題/領域番号 |
23520394
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
PEKAR Thomas 学習院大学, 文学部, 教授 (70337905)
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キーワード | 亡命 / 亡命文学 / 異文化研究 / 文化接触研究 / 文化テキスト / 移住 / 移民文学 / 超文化研究 |
研究概要 |
本研究では、第二次世界大戦下、東アジア亡命中に書かれたテキストを例に、「亡命の文化テキスト」(ナレーション)という新概念の理論的構築と実践的検証を進めている。本概念は、ドイツ語で書かれた現代の移民文学にも適用される。以上の文脈において、以下の3点の検証を行なった。 a) クリフォード・ギアツ、ロラン・バルト、スラヴェイ・ジジュクらのテキストにおける、「異文化について書く」という様々なコンセプトを分析し、これらのコンセプトを小泉八雲や新渡戸稲造らの日本に関する諸言説の関連において位置づけた。本検証の結果は、2012年6月にバンベルク大学で開催された学会「文化的テキストの生産について Über die Erzeugung kultureller Texualität」にて研究報告を行ない、その内容は本年、出版される予定である。 b) 狭義の亡命(第二次世界大戦中における東アジアへの亡命)を精神分析的観点から検証し、2013年3月にウィーンで開催されたオーストリア亡命研究学会「東アジア亡命における精神分析 Die Psychoanalyse im ostasiatischen Exil」にて研究報告を行なった。この研究報告において、上海で発行されていた亡命雑誌「Gelbe Post」を取り上げた。本雑誌の一部はコピーの閲覧が可能であるが、その他の部分に関しては、上海図書館にてのみ閲覧可能であることが明らかになったため、今後、閲覧のための訪問を計画する。オーストリア亡命研究学会での研究報告も間もなく出版予定である。 c) 「文化的テキスト」という概念を理論的に深めるため、各地を訪れ、亡命・移民文学を専門分野とするベルリン自由大学のイルメラ・フォン・デア・リューエ教授、ミュンスター大学のモリッツ・バスラー教授、ギーセン大学のウヴェ・ヴィルス教授らと議論を重ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概念「文化的テキスト」を「亡命」および「移民」の観点から検証した。また、異文化研究の点では、特に日独の文化接触の観点から接触のプロセスを検証した。その結果、概念「文化的テキスト」は理論的により正確に定義された。しかしながら、第二次世界大戦下におけるドイツ語話者の東アジアへの亡命に関して、更に広範囲わたる資料の収集を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度も、毎月、「文化コンテクスト」をテーマとして、オーストリア人、ドイツ人、日本人の約12名からなる研究会を開催し、2013年9月21日、22日に開催される国際シンポジウムに向けて準備を進めてきた。シンポジウムの重点は、「判読可能性」を問われる要素や現象、すなわち、どの程度までテキストのメタファーや読解のメタファーが異文化理解に作用しているかという理論的考察に置かれる。2013年度は引き続き、以下の研究計画を実行する。 (a) シンポジウムの準備のため、2013年夏にベルリンの図書館および文書館にて、シンポジウムの発表に必要な文献の収集を継続する。その際、シンポジウムの内容について招聘者と調整し、議論を進める。(b) 引き続き、毎月、研究会を開催し、議論を進める。(c) 2013年9月14日、15日の国際シンポジウム開催 (d) シンポジウムでの口頭発表論集の出版 (e) シンポジウム後、上海図書館で亡命雑誌「Gelbe Post」の原典を閲覧するため、上海への資料収集滞在をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) シンポジウム開催 (2) 文献収集および シンポジウム招聘者との議論のための海外渡航費 渡航先:ベルリン、ミュンスター、ギーセン、上海 (3) 収集した資料の整理および文献翻訳のため大学院生を雇う (4) 研究に必要な図書および備品購入
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