中世からルネサンスへの転換期とされるフランスの15世紀後半から16世紀前半は、キリスト教的な聖なる観念が俗との関係において強く規定されるようになり、聖・俗の対立が鮮明化した時代といえる。この間に栄えた愚者演劇は、俗の側からの発現としてこの対立軸の存在を広めることに寄与しているものの、しかし同時にこの対立図式の全体をも視野に入れたその知は、二項間の関係性をめぐる問題に思考を凝らし何らか意見表明へと向かっているようにみえる。本研究ではそこに聖俗超越への志向性の看取しうることを、その知の表出であるテクスト(身振り、衣装を含む)並びに歴史的文化的な背景と知の体系の総合的な検討を通して考察し導き出した。
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