研究課題/領域番号 |
23520403
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
新野 守広 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (00228131)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本年度も前年度に引き続き、ルネ・ポレシュ、ファルク・リヒター、アルミン・ぺトラス、マリウス・フォン・マイエンブルク、デーア・ローアー、エーヴァルト・パルメツホーファー、ルーカス・ベアフス、ローラント・シンメルプフェニヒら1960年代以後に生まれた劇作家たちの表現活動を考察した。彼ら一人ひとりの個別活動に即して分析するとともに、彼らの活動全体に共通する特色として、伝統的なドラマ構造への批判が顕著に観察される点に着目し、この批判的動機がそれぞれの作家の表現活動をどのように特色づけているかを考察した。 特に本年度は、劇団文学座が2015年4月に東京都内のアトリエでルーカス・ベアフスの『二万ページ』を翻訳上演することが決まったため、ベアフスの表現活動、とくにその作家活動に着目し、戯曲の特徴の分析を試みた。舞台表現の考察にあたって、実際に上演された舞台の分析は不可欠だが、ドイツ語圏で製作された舞台が日本に招聘されて公演が行われることは稀である。しかし、翻訳文化が盛んな日本では、翻訳上演が行われることは多い。今回の文学座での公演にともない、戯曲の考察にとってまたとない機会を得ることができた。 また、グローバル化が進む中、舞台表現にポストモダン美学が浸透する一方で、世界のどの国々でも、演劇批評のマージナル化の問題が顕著になってきた。本年度は、2014年10月に国際演劇評論家協会が北京で開催した総会に出席し、日本の実情を報告した。 本年度も上演分析にあたっては、ドイツ語圏の新聞や専門誌に掲載される劇評やドイツ語圏で行われる関連学会の研究発表なども幅広く入手した。また、舞台表象と文化制度にかかわる幅広い分野(都市論、建築史、近代国家形成史、メディア論、政治史、文化政策論等)の成果を和書洋書を問わず購入した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に本課題研究がスタートして以来、資料収集とその分析との二方面から見て、本研究は順調かつ着実に進捗してきた。資料収集に関しては、研究対象となる劇作家たちの戯曲、新聞や専門誌に掲載された劇評、舞台の映像資料、専門の研究者による論考、舞台表象と文化制度にかかわる幅広い分野の成果の入手と購入が研究計画通りに進んでいる。また、収集した資料の整理、分類とその分析に関しても予定通り進行しており、成果発表も行ってきた。このような資料収集とその分析の進捗度から判断して、本研究課題の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は研究最終年度であるため、研究対象を拡げた平成26年度の推進方策を踏襲して、最終年度にふさわしいまとめを行う。 (1)ドラマ構造にとらわれない舞台表現を推進する表現者を新たに研究対象に加え、そのポストモダン的特徴を考察する。 (2)1960年代以降に生まれた劇作家たちの戯曲の入手に努め、彼らの表現に見られるドラマ批判の要素の考察を進める。 (3)ドイツ語圏の新聞や専門誌に掲載される劇評やドイツ語圏で行われる関連学会の研究発表を入手する。 (4)舞台表象と文化制度にかかわる幅広い分野の研究成果の収集と分析を行う。
|