研究課題
前年度に引き続き、1960年代以後に生まれたルネ・ポレシュ、ファルク・リヒター、アルミン・ぺトラス、マリウス・フォン・マイエンブルク、デーア・ローアー、エーヴァルト・パルメツホーファー、ルーカス・ベアフス、ローラント・シンメルプフェニヒらの劇作家たちの戯曲を幅広く入手し、彼らの表現活動の実態を把握する作業を継続するとともに、近代以降のドイツ語圏演劇の歴史の中に彼らの活動を位置づける作業を行った。また昨年度以来、分析対象をドイツ語圏の劇作家に限定せず、日独比較も行うように心がけてきた。昨年度はドイツ語圏のリミニプロトコルと日本の清流劇場の表現活動の政治性を比較する論考を発表したが、本年度は日本におけるハイナー・ミュラーの受容についての査読論文をドイツの大学の研究雑誌に発表し、ドイツと日本の政治風土の違いを演劇作品の上演の分析を通して明らかにすることができた。五年間を通して、劇作家一人ひとりの表現活動の個性を同時代の作家たちの活動から際立たせる違いに着目し、そこから一人ひとりの個別活動を分析する作業を続けてきたが、ようやく本年度に、伝統的なドラマ構造への批判が顕著に観察される世代が登場するきっかけとなった重要な作家の一人であるハイナー・ミュラーに着目し、彼の作品が日本でどのように受容されたのかを考察することができた。このことは最終年度にふさわしい成果であると考えている今後は、ポストドラマ演劇の潮流が進むドイツ語圏の演劇において、一見正反対に見える文学的ドラマが再生する傾向を取り上げ、その背景の分析を行う計画である。
すべて 2015
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Bamberger Studien zu Literatur, Kultur und Medien
巻: 13 ページ: 119-134