研究課題/領域番号 |
23520404
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
塩塚 秀一郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70333581)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | フランソワ・ボン / ペレック / 日常 / 制約 |
研究概要 |
現代フランスの作家フランソワ・ボンの著作、とりわけ『高速道路』、『鉄路の風景』、『デーウ』を中心に研究を行った。ボンは『高速道路』のエピグラフとしてペレックの「何に着目すべきか?」の一節を挙げている。このエッセイで提案されているのは、あまりに慣れすぎていて認識できない日常を捉えるには、普段なら行わない不自然かつ不要な行為を主体に強いることが有用である、との考え方である。『高速道路』でボンが行っているのも、一週間高速道路から出ずに、料金所やパーキングを眺めるという自らへの拘束であった。『鉄路の風景』では、同一曜日、同一時間、同一車両の鉄道で、移動を繰り返すという制約を自らに課している。ここでは、制約に「反復」の要素が加わることで、一瞬で目の前を過ぎ去っていくありふれた風景について、その背景や来歴を考えるよう促されることになっている。こうして、ボンの目がひきつけられるのは、「消え去った世界の痕跡」である。車窓という、あらゆるものが一瞬にして過ぎ去る枠組みを通して眺めているだけに、「はかなきもの」への愛惜はいっそう高まっているようである。『デーウ』の主題は、鉄道路線のそばからも姿を消しつつあった工場である。ボンは、ペレックの『W』やボルタンスキーによるインスタレーションなどを巧みに喚起しつつ、産業社会の人間軽視や効率至上の価値観を告発している。日常を通じての社会批判は、一見目につきにくいものの、ペレックの試みにもすでに含まれているものである。ボンは、視線に無理強いすること、すなわち、「技法」や「制約」を課して現実を眺めることにこそ、ペレックが残した最良の遺産をみているが、この評言はボン自身の方法や問題意識をも言い当てるものとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度はフランソワ・ボンの研究とペレックの〈並以下のもの〉概念の再検討を並行して行う予定であったが、後者の研究を深めることができなかった。ペレックによる理論的テクストをふくめて再検討することで、ペレックによる「日常」へのアプローチの射程を明らかにすることは次年度以降の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
ジャン・ロラン、オリヴィエ・ロラン、フランソワ・マスペロ、トマ・クレール、フィリップ・ヴァセらの著作を、読み解いていく。その際、企画の内的発展、「モノの見え方」の変化にとりわけ注目していきたい。また、ペレック研究の知見、とりわけ、「自伝」および「物語」への関心と〈並以下のもの〉概念の関係についての知見に基づき、ボンをはじめとする後続作家の試みをその起源・背景から照らし出したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度に引き続き、フランス文学・社会学・都市学関係図書を購入し、文献調査を進めていく。また、必要に応じて、パリとその近郊への現地調査を試みることも想定している。作品によっては、すでに「描写」を試みてから十年以上の年月が経っているものもあるため、現地に当時のままの風景が残っているとは思えないが、少なくとも、全体的な雰囲気を知ることには意味があると思われる。さらに、ある程度の成果が出たら、フランスの学会やセミナーに参加して、現地の研究者と意見を交換するつもりである。このための旅費が必要となる。
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