最近二十年ほどのフランス文学を特徴づける潮流のひとつとして、都市生活の中でふだん着目されることのない「日常」に着目し記録しようとする、一群のルポルタージュ的作品がある。フランソワ・マスペロの『ロワシー・エクスプレスの乗客』(一九九〇)、フランソワ・ボンの『鉄路の風景』(二〇〇〇)、フィリップ・ヴァセによる『白い本』(二〇〇七)などである。これらはいずれも誰の注意も引かない日常の風景を書きとめようとする実験的試みである。本研究では、これらの著者たちが風景をいかに記録しているかを具体的な記述に即して論じ、それを通じた現代社会批判の射程について考察した。
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