研究課題
昨年度に引き続き、本年度はフランス国立図書館所蔵の『サラムボー』の初期草稿の解読と転記作業を進め、転記した草稿は大学紀要論文で発表した。ファム・ファタルに関するbrouillonsを確認し、Arsenal図書館およびフローベールの書斎では創作に際して用いられた各種の聖書を調査して、Judith神話の『サラムボー』への組み込みに関してフランス語論文をまとめ、イタリアの雑誌に発表する予定である。Rouen市立図書館に保存された『サラムボー』の数枚のシナリオについては、作品の150周年記念に同図書館で開催された展覧会に昨年転記した資料を提供し展示された。また同時に150周年事業の一環で、フローベール研究所サイトで、初期草稿にみられるファム・ファタルの重要な萌芽について、ポリュビオスおよびミシュレとの比較論文を発表した。一方、来年には出版される予定の新プレイアッド版Salammboの共同校訂者の一人であるYvan Leclercフローベール研究所所長(Rouen大学)を招聘し、ファム・ファタルの関連テーマについて、2回の講演会および研究者集会を開催した。みなとみらいの集会には、小倉孝誠フランス文学会副会長(慶應義塾大学)をコメンテーターに招き、数時間にわたる白熱した議論が展開された。小田原キャンパスでの一般公開講演会では、ミシュレ宛の貴重な未公開書簡が公開され、250人に上る聴衆から、ジャポニスムとの関連の質問が出るなど、日仏間の情報交換だけでなく、研究テーマを深める貴重な機会となった。また3月に開催されたルーアン大学研究所主催の国際プロジェクト『ブヴァールとペキュシェ』の国際会議では、フローベール作品における「宗教」のテーマを分析し、『サラムボー』にもかかわる宗教的要素の考察を深めることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
これまで草稿の解読作業は量的にも質的にもおおむね順調に進んできた。また、解読中の草稿については、ファム・ファタルに関する論文も発表する機会に恵まれた。特に、150周年に発表したポリュビオス論では、これまで曖昧なままであった『サラムボー』の原典との関係を明らかにすることができた。また、新プレイアッド版共同校訂者の両名を二年にわたり招聘し、国際情報交換ができた。初年度にこれまでのファム・ファタル論の総括をするとともに、今年度はファタリテの文学という壮大な新しい視点も導入されて、申請した目的であるジェンダー研究と草稿研究を超えた、新しいファム・ファタル論への道が開かれたと思われる。
最終年度である今年度は3年間でまとまった転記作業とこれまでの資料の分類・整理をする。より正確に広範囲に草稿にあたることで、領域横断的にファム・ファタルという視点で『サラムボー』を再考する予定である。また、作品に組み込まれた資料の解読にも取り組む予定である。昨年度および一昨年度に招聘した新プレイアッド版共同校訂者2名の講演会および研究者集会の講演原稿および逐次通訳原稿、フローベールのミシュレ宛未公開書簡、研究代表者の論文を研究報告書として本年度出版予定である。
平成24年度の残金は、本年度分と合わせて、平成23年度および平成24年度の招聘および研究者集会等の報告書の出版費用予算に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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