研究成果は以下のとおりである。ムージルの1920年代の演劇批評は第1次大戦後のウィーンの精神状況の観察と批判である。それらの演劇批評は、往々にしてアルフレート・ケルの演劇批評を参照して執筆されている。ムージルの小説『特性のない男』もケルの演劇批評の影響のもとに生まれた。 ケルはムージルの「産婆」と称される。ムージルの処女作『テルレス』を激賞して、世に出したからである。しかしムージルの『特性のない男』がケルの批評をきっかけに生まれたことが明らかになった今、ケルはムージルについて二度の産婆役を果たしたと言いうる。
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