1200年前後に宮廷を舞台に繰り広げられた文学は、当時のドイツ語である中高ドイツ語で書かれた騎士を主人公にした騎士による騎士のための文学で、押韻文学なるが故の独特の表現形式が見られる。それとともに今日のドイツ語へと変遷する重要な過程にあり、語学的に見ても興味深い現象が見られる。今回の研究課題の下に当時の散文作品である法書『ザクセン法鑑』に見られる表現形式を、代動詞、除外文、縮約形、否定表現などの観点から詳しく検証し、最後に、中高ドイツ語の『哀れなハインリヒ』の用例と比べて、これまで調べてきた表現形式が中高ドイツ語叙事文学独特のものであることを明らかにすることができた。
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