グリム兄弟の文学観(民衆の伝承には古代の記憶が残存)、人間観(古代人・民衆・子どもは人類史的・個人史的に〈幼年期〉)、宗教観(神に導かれた無自覚的な文学創造)の独自性を、18世紀後半の疾風怒濤、18世紀末の初期ロマン派の思想の圏内で追究した。特に兄弟の思想を〈近代人的分裂〉解消の処方箋の一つと捉え、〈自然〉憧憬がどのような視覚的〈イメージ〉によって醸成され、また思考が新たな〈イメージ〉を喚起するのかを研究した。ゲーテの形態学の植物、ヘルダーの〈民衆ポエジー〉、画家ルンゲの〈新しい風景画〉の子ども・植物・大宇宙のモチーフとアラベスク手法との関係から、兄弟独自の〈自然ポエジーの風景〉を解明した。
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