研究課題/領域番号 |
23520413
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
中井 章子 青山学院女子短期大学, その他部局等, 教授 (10172256)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | リベラル・アーツ / ロマン主義自然哲学 / 近世神秘思想 |
研究概要 |
本研究の目的は、1790年代から1810年に至る時期のドイツの哲学者と文学者の大学論や学問論をとおして、「リベラル・アーツ」の理念を探究し、現代の「リベラル・アーツ」論に寄与することである。その際、1810年のベルリン大学創立以前に焦点を置き、19世紀の専門化の中で忘れ去られていった知の総合性に注目したいという意図がある。 平成23年度には、研究実施計画どおり、平成26年度までの研究全体に関わる大学史、大学論、高等教育論、学問論に関する文献を、日本語・英語・ドイツ語にわたり、広く調査し、集めた。 この過程で、研究課題である「1800年前後のドイツにおけるリベラル・アーツ」を理解し、その特徴を際立たせるには、宗教改革とルネサンス以来の16-18世紀の人間論や自然論や学問論をも視野に入れる必要があると考えるに至った。 この関連で、平成23年度には、「近世プロテスタント圏神秘思想における『スピリチュアリティ』」(鶴岡・深澤編『スピリチュアリティの宗教史 下巻』リトン、2012年1月25日、241-269頁)と題する論文を書いた。日本人は世俗化の進んだ19世紀後半以降にヨーロッパと直接的に関わるようになったため、「和魂洋才」というように、ヨーロッパの「魂」ないし「スピリチュアリティ(霊性)」を視野にいれずにヨーロッパ文化を受容した面があり、この問題は、本研究の目的であるリベラル・アーツ論や大学論にも関わる。 また、研究実施計画に記したように、日本シェリング協会のシンポジウム(平成23年7月3日、山口大学、「自然における光と闇」)において、「近世自然神秘思想における『ガイスト』と『自然』」と題して報告した。ここでは、東日本大震災とその後の状況は、現代の高等教育にも問題を投げかけていると考え、人間と自然の関係の問題、科学論や学問論に関し考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にあった基礎的文献の調査と収集は順調に進んだ。 具体的な研究に関しては、研究をさらに広い視野から探究する必要があると考えるようになったため、1800年前後をそれ以前の時代との関連で考察し、論文にまとめ、学会で報告した。 現代の問題を考察し、研究者と議論する中で、研究課題についての理解が深まった。 研究実施計画には、平成23年度には重点的にノヴァーリスとゲーテを研究することとなっていたが、ゲーテ研究については、来年度(平成24年度)に行うことになった。 以上のように、具体的な研究実施研究とはずれる面も少々あるが、全体として本研究は順調に進んでいると、自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
計画にのっとり、平成24年度には、ノヴァーリスやゲーテやシラー、フィヒテやシュライエルマッハやシェリングやフンボルトなど、1800年前後のドイツの哲学者や文学者の研究を進める。 平成24年度と平成25年度にはドイツでの研究を、平成26年度にはアメリカでの研究を計画している。 本研究は思想史的研究であるが、現代の課題を視野におきつつ進めるところに、新しさと意義がある。現代の高等教育、なかでも「リベラル・アーツ」の問題は、グローバルに探究していく必要がある。高等教育も、人間の交流も、一国内に留まるのではなく、グローバル化しているからである。 日本およびドイツやアメリカの研究者との議論は、現代の高等教育の問題と歴史的研究を結び付けていくうえで実り多いものとなるのではないかと期待している。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き、ノヴァーリス、ゲーテ、シラーのような文学者、フィヒテ、シェリング、フンボルト、シュライエルマッハのような哲学者の学問論や作品を「リベラル・アーツ」という視点から分析し、論文にまとめる予定である。 ドイツのDeutsches Literaturarchiv(Marbach)という文学研究図書館に滞在して研究する予定であり、研究費を主としてその旅費として使用する。 ドイツ滞在の折に、すでに研究交流を重ねているロマン主義研究者と面談して意見交換する予定である。
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