研究課題/領域番号 |
23520413
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
中井 章子 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 教授 (10172256)
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キーワード | ロマン主義、哲学 / ドイツ |
研究概要 |
本研究の目的は、ドイツの1800年前後の哲学者(カント、フィヒテ、シュライエルマッハ、W・フンボルト、シェリング)や文学者(ゲーテ、シラー、ノヴァーリス、F・シュレーゲル)の大学論をとおして、現代の「リベラル・アーツ」をめぐる議論に一石を投ずることである。 平成24年度には、以下の二つの共同研究に参加して、現代日本における「リベラル・アーツ」の課題について知見を深めることができた。一つは、青山学院大学総合研究所の「キリスト教大学の学問体系論」プロジェクトである。ここでは、現代日本の大学における「哲学」や「人文学」の位置づけについて意見交換できた。特別講演会「人文学と制度」(西山雄二、平成25年3月9日)においては、コメンテーターとして意見を述べた。二つ目は、青山学院女子短期大学総合文化研究所の「リベラル・アーツの比較研究」プロジェクトである。この関連では、「教養教育にとっての『古典』の問題」や「源氏物語と日本の『教養』」の問題について、意見交換ができた。 平成23年度の「研究実績の概要」に書いたように、1800年前後のドイツの「リベラル・アーツ論」を論じるためには、宗教改革やルネサンス以来の、人間論・学問論・教育論を視野に入れる必要があると考えるにいたった。この関連で、ルターと同時代の人文主義者・非党派的思想家であるセバスティアン・フランクや、16世紀後半の思想家ヴァレンティン・ヴァイゲルのテクストを読み、翻訳した(教文館より平成25年度に出版予定)。フランクについては、『青山學院女子短期大學紀要』(第66輯、平成24年)に「パラドクスとしての福音~セバスティアン・フランクの『パラドクサ』をめぐって~」を発表した。 平成24年度には、以上のような日本における意見交換、文献解読などに時間を使ったので、ドイツにおける調査は次年度に持ち越すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度には、日本国内の研究者との意見交換により、現代日本の「リベラル・アーツ」の課題に関し理解を深めることができた。 研究発表し、意見交換する場(青山学院大学総合研究所や青山学院女子短期大学総合文化研究所プロジェクト)を充実させることができたことも、次年度以降の研究につながっていくはずである。 単独の研究においては、1800年前後のドイツ思想に関するテクストと参考文献を解読・吟味し、さらに、1800年以前の宗教改革期に歴史的にさかのぼって研究を進めることができた。 ドイツの図書館における調査は行わなかったが、その準備が十分できたので、平成25年度の在外研究の成果に期待している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降には、当初の研究計画に沿って研究を進める。平成25年度にはとくに、ノヴァーリスとゲーテ、シェリング、フィヒテ、シュライエルマッハなどの大学論を再検討し、研究発表を行い、日本の他の研究者と意見交換する。 平成25年度夏には、ドイツ、ヴォルフェンビュッテルのHerzog August Bibliothekに約3週間滞在して、調査・研究する。ヴォルフェンビュッテルに滞在することにしたのは、研究施設が整っているためである。ヴォルフェンビュッテル滞在の前後に、イギリス、ドイツのミュンヘンなどで、研究者と意見交換する予定である。 平成25年現在の日本では、大学論が政治においても活発に議論され、出版物も多い。本研究では、現在の議論一般を視野にいれつつ、1800年前後のドイツにおける議論を分析する。 21世紀のリベラルアーツを論じるには、アメリカの大学史と議論を知っている必要がある。本研究ではアメリカにも注目する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に海外での調査研究を行わなかったため、平成25年度に全体で約一か月、海外で研究することにしている。 予定では、8月20日頃、日本を発ち、イギリスに数日滞在、資料を集めたのち、ドイツに向かう。ドイツのヴォルフェンビュッテルのHerzog August Bibliothekには約3週間滞在し、資料収集、コピーをおこない、世界から研究滞在のために集まっている研究者と議論する。この間にヴァイマールにも行く予定である。最後にはミュンヘンで、ロマン派研究者と意見交換する予定。 研究費は、旅費、滞在費、図書館資料のコピーだけでなく、出版されている英語、ドイツ語の書籍の購入にも当てる。
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