研究課題/領域番号 |
23520413
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研究機関 | 青山学院女子短期大学 |
研究代表者 |
中井 章子 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 教授 (10172256)
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キーワード | リベラルアーツ / 学問論 / 近代の神秘思想 / ロマン主義 / ドイツ哲学 |
研究概要 |
2013年度には、7月にドイツ初期ロマン派の詩人・哲学者・自然科学・技術者であるノヴァーリスの学問論をまとめて、学問体系論の研究グループにおいて発表した。("Credo Ut Intelligam, Vol.4,研究プロジェクト「キリスト教大学の学問体系論」研究報告論集、第4号、13~20頁、青山学院大学総合研究所、2014年3月) 1800年前後のドイツにおけるリベラルアーツを理解するには、ルター以降のプロテスタントの大学教育や、以前から進めているドイツ語圏近代の神秘思想も重要と考えている。この研究はリベラルアーツ教育論に、教育思想を越えた新しい面を開くものとなるはずである。この観点から、ルターと同時代の人文主義者であるセバスティアン・フランクの「パラドクサ」とヴァレンティン・ヴァイゲルの「世界の場所について」を翻訳し、解説を書いた。ヴァイゲルの「世界の場所について」は16世紀のリベラルアーツのなかで新時代の宇宙論やグローバルな世界像を学んだ思想家が、キリスト教について考察した作品である。この翻訳は2014年5月に出版された。(『キリスト教神秘主義著作集 第12巻、十六世紀の神秘思想』教文館、2014年5月、152~347頁、554~579頁) 2014年2月から3月には、ロンドン、ヴォルフェンビュッテル(ドイツ)、ミュンヘンで研究した。ロンドンでは、クウェイカーの図書館と医学史図書館(Wellcome Library)で調査、ヴォルフェンビュッテルではHerzog August Bibliothekで文献調査をし、研究者と意見交換した。ミュンヘンでは教授(Professor Konrad Feilchenfeldt)とリベラルアーツおよび1800年前後のドイツ文学・思想に関して意見交換し、アドヴァイスしていただいた。ミュンヘンでは古書店、書店での文献探索も有益であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1800年前後のリベラルアーツを考えるうえで、ルター以来のプロテスタントの教育論、大学の状況、ピエティスムス(敬虔主義)や神秘思想のような思想潮流を背景としてしっかりと視野に入れる必要があると考えたため、研究の範囲が広がっている。 しかし、すでに発表したカントの大学論や18世紀の「社交性」に関する論文も合わせて、1800年前後のリベラルアーツに関する研究はほぼ順調に進んでいる。 ノヴァーリスについてはあるていどまとめ、その他の初期ロマン主義者に関しても見通しをもっている。ゲーテに関しても、自然学についてかつて研究したものをふまえ、これからいままで研究していない、大学行政者としてのゲーテを取り上げる予定である。 「研究の目的」においては、アメリカのリベラルアーツも取り上げる予定であったが、17・18世紀のドイツの大学状況や思想に集中したほうが、私の研究としては成果が上がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述したとおり、私の研究としてはドイツに地域をしぼり、時代を16世紀までさかのぼって広げる方が成果があがると考えるにいたった。そのためドイツに海外出張し、文献調査と現地調査をする予定である。 日本では、すでに収集した文献を読み、ヘルダー、ゲーテ、シラーなどの文学者・思想家、フィヒテ、シェリング、シュライアマッハーなどの哲学者に関して、リベラルアーツの観点から考え、論文にまとめる予定である。 アメリカについては、出張はせずに、すでに出版されている研究に基づいて、ドイツの大学思想に関わる限りにおいて考察していくつもりである。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度にはドイツに出張したが、2011年度と2012年度には海外出張せずに、日本で文献調査、研究を行っていた。そのため次年度使用額が生じた。 2014年度には、海外出張し、ヴォルフェンビュッテルとヴァイマール・イェナなどに滞在して研究する予定である。
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