研究課題/領域番号 |
23520414
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研究機関 | 独立行政法人水産大学校 |
研究代表者 |
中島 邦雄 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 教授 (00416455)
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研究分担者 |
島村 賢一 久留米大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60258366)
嶋崎 啓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (60400206)
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キーワード | 国際研究者交流 / ドイツ |
研究概要 |
平成23年度に引き続き、バッハオーフェンの『両洋の神話』へのA.ボイムラーの「序文」の翻訳を行った。研究推進会議を2回開催し、各自担当部分の翻訳を完了するとともに、その相互添削作業を精力的に行った。また、研究資料収集のため、8月に嶋﨑順子がフライブルク大学図書館で調査を行い、島村賢一がベルリン大学図書館資料庫、国立ベルリン図書館、フランクフルト・ユダヤ博物館で調査、また、ポツダムにおけるテンニエス教授時自宅で意見交換を行った。 業績は口頭発表3本である。これらの発表のうち、島村賢一は、バッハオーフェンの母権制論評価においてのボイムラーの女権尊重フェミニズムとも見える姿勢が、とニーチェへのナチス化歪曲とともに父権制反フェミニズムへと転化してナチス入党へと進んでいった過程の背後にある女性差別的なドイツ固有の支配系普遍主義を洗い出している。嶋﨑啓は、A.ボイムラーのグリム解釈に見られる「曲解」を、グリムの述べる「母」性をめぐる引用のあり方や特徴を分析することによって、具体的に跡付けている。嶋﨑順子は、A.ボイムラーのドイツ・ロマン主義論を明らかにするために、「序文」第2章で扱われる作家たちの思想の位置づけと関係を要約した上で、その理論に全体主義的思考への強い傾きがあること、A.ボイムラーの関心の中心は父権制と母権制の対立よりもむしろ個人主義批判にあるのではないかという問題提起をしている。 発表者3名は「研究目的」および「研究計画・方法」に沿って順調に、A. ボイムラーに関する研究を進めており、たんに文献学的なゲルマニスティクの枠を広げ、アクチュアルな現代思想であるフェミニズムやロマン主義再評価にも、これまでにない観点から貢献している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の業績は論文2本、口頭発表2本の予定であったが、実際には口頭発表3本となった。その理由は、各担当者の翻訳は完了したものの相互添削作業に手間取り、論文執筆及びそれについて討議する時間がとれなかったためである。添削作業の際の意見交換と最終的な翻訳者の納得に予想を超える時間が必要であった。しかし、「序文」の内容をより深く理解し、翻訳をよりよいものにするためには相互添削作業が欠かせないことも判明した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に引き続き翻訳の添削作業を進める。同時に、平成24年度に行った3本の口頭発表とその際に行われた質疑応答の成果を踏まえて、平成25年度には口頭発表1本と、論文4本を執筆する予定である。論文については、すでに行った発表内容を素材として作成するため、平成25年度中には終えることが可能である。これまでに業績のない1名(中島)についてはトーマス・マンを仲介項としたA.ボイムラーとケレ―ニーの神話観の違いについて口頭発表を行い、論文を執筆する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費143,662円は、おもに研究会開催のための旅費に使う予定である。研究会では日頃メールで行っている添削作業の口頭での確認と、執筆中の論文についての質疑応答を行う。
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